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翌日。といっても、夜勤の僕たちには寝る前の時間だったが、コボル隊に招集がかけられた。
SSLの本部で待っていたのは、総警備長という初老の男性ともう一人、二回りは若い男性だった。
「レイル君、はじめまして。総警備長の、フォートだ」
フォート総警備長が挨拶をする。一般のSSL隊員が話をするのは、隊長から警備長クラスまでで、総警備長と話をする機会は、めったにない。
「はじめまして、レイルです」
「コボルのことは、残念だったが、君が近くにいて助けになったと聞いている。ありがとう」
「いえ・・・それは違います。僕は、何もできませんでした」
「だが、君があの場にいなければ、コボルは確実に殺されていただろう」
「・・・」
僕は、顔を上げていられなくなった。フォート総警備長の言葉が、かえって責められているような気がしたのだ。
「さて、諸君。コボル警備長はしばらく休職となる」
「北の警備長の職は、東のアッシュ警備長が兼務することになる」
「アッシュです。よろしくお願いします!」
白い歯が、キラリと光る。表情が豊かで、顔だちも整っている。「チッ」という舌打ちが、ジャヴさんから聞こえた。表情も想像がつく。
「アッシュ警備長って、確か・・・SSL唯一のアーツ・ホルダーの・・・」
「そうです! レイル君も審査を受けていると聞いて、一度話してみたかったんですよ。よろしくね、レイル君!」
「あ、は、はい。よろしくお願いします」
「なんか、キラキラしてるな・・・」
「うーん・・・レイル君よりも真っすぐな目を持つ人間がいたのか」
「まて、あいつは結構歪んでるぞ」
僕の陰に隠れて、ジャヴさんとジュリアさんがこそこそと話をしている。
「なんで、僕の後ろにいるんですか・・・前に出て、話をしてくださいよ・・・」
僕は、後ろの二人に声をかける。
「嫌だ。知らない人は怖い」
「俺もだ」
「・・・」
僕たち三人を置いて、ララベルさんとフォート総警備長の話は進んでいく。
「北のSSL隊については、以上だ。それで、コボル隊についてだが・・・臨時ということで、ララベルに隊長を努めてほしい」
「えっ」
「ララベルがっ!?」
陰に隠れていた二人も、にゅっと顔を出す。
「勤務態度も実力も、申し分ないと聞いている・・・できるか」
「私が・・・」
ララベルさんは、僕たちを振り返る。
「まぁ、臨時だし、そう固く考える必要はないんじゃないの」
「俺が付いてるしな」
「あんたが、一番心配なのよ・・・」
ララベルさんと僕の目が合う。頷く。それで、伝わったはずだ。
「わかりました・・・拝命します」
「うむ・・・良かった。隊長が不在となると、分解して他の隊に振り分けることになるのだが、君たちは連携もとれいているようだし、なるべく今の隊を残したかった」
フォート総警備長は、椅子に腰かける。一心地ついたようだ。
「隊長が変わるのは・・・良くも悪くも、珍しいことではない。我々もサポートするから、頑張ってほしい」
「わかりました」
こうして、この日から、新体制が始まった。コボル警備長は療養のため休職となり、北のSSLはアッシュ警備長の指揮下におかれることとなる。
とはいえ、ララベルさんを除いた隊員は、日常の業務は変わりなく進むこととなりそうだ。
夜勤だった僕とジャヴさんは、そのまま退室する。ララベルさんとジュリアさんは、残って引継ぎ業務などをするようだ。




