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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第八章 代謝
81/200

8-9

翌日。といっても、夜勤の僕たちには寝る前の時間だったが、コボル隊に招集がかけられた。

SSLの本部で待っていたのは、総警備長という初老の男性ともう一人、二回りは若い男性だった。


「レイル君、はじめまして。総警備長の、フォートだ」


フォート総警備長が挨拶をする。一般のSSL隊員が話をするのは、隊長から警備長クラスまでで、総警備長と話をする機会は、めったにない。


「はじめまして、レイルです」

「コボルのことは、残念だったが、君が近くにいて助けになったと聞いている。ありがとう」

「いえ・・・それは違います。僕は、何もできませんでした」

「だが、君があの場にいなければ、コボルは確実に殺されていただろう」

「・・・」


僕は、顔を上げていられなくなった。フォート総警備長の言葉が、かえって責められているような気がしたのだ。


「さて、諸君。コボル警備長はしばらく休職となる」

「北の警備長の職は、東のアッシュ警備長が兼務することになる」

「アッシュです。よろしくお願いします!」


白い歯が、キラリと光る。表情が豊かで、顔だちも整っている。「チッ」という舌打ちが、ジャヴさんから聞こえた。表情も想像がつく。


「アッシュ警備長って、確か・・・SSL唯一のアーツ・ホルダーの・・・」

「そうです! レイル君も審査を受けていると聞いて、一度話してみたかったんですよ。よろしくね、レイル君!」

「あ、は、はい。よろしくお願いします」

「なんか、キラキラしてるな・・・」

「うーん・・・レイル君よりも真っすぐな目を持つ人間がいたのか」

「まて、あいつは結構歪んでるぞ」


僕の陰に隠れて、ジャヴさんとジュリアさんがこそこそと話をしている。


「なんで、僕の後ろにいるんですか・・・前に出て、話をしてくださいよ・・・」


僕は、後ろの二人に声をかける。


「嫌だ。知らない人は怖い」

「俺もだ」

「・・・」


僕たち三人を置いて、ララベルさんとフォート総警備長の話は進んでいく。


「北のSSL隊については、以上だ。それで、コボル隊についてだが・・・臨時ということで、ララベルに隊長を努めてほしい」

「えっ」

「ララベルがっ!?」


陰に隠れていた二人も、にゅっと顔を出す。


「勤務態度も実力も、申し分ないと聞いている・・・できるか」

「私が・・・」


ララベルさんは、僕たちを振り返る。


「まぁ、臨時だし、そう固く考える必要はないんじゃないの」

「俺が付いてるしな」

「あんたが、一番心配なのよ・・・」


ララベルさんと僕の目が合う。頷く。それで、伝わったはずだ。


「わかりました・・・拝命します」

「うむ・・・良かった。隊長が不在となると、分解して他の隊に振り分けることになるのだが、君たちは連携もとれいているようだし、なるべく今の隊を残したかった」


フォート総警備長は、椅子に腰かける。一心地ついたようだ。


「隊長が変わるのは・・・良くも悪くも、珍しいことではない。我々もサポートするから、頑張ってほしい」

「わかりました」


こうして、この日から、新体制が始まった。コボル警備長は療養のため休職となり、北のSSLはアッシュ警備長の指揮下におかれることとなる。

とはいえ、ララベルさんを除いた隊員は、日常の業務は変わりなく進むこととなりそうだ。

夜勤だった僕とジャヴさんは、そのまま退室する。ララベルさんとジュリアさんは、残って引継ぎ業務などをするようだ。

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