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病院の入口で、食事から戻ってきたジャヴさん、ジュリアさんと合流する。
「あっ、ジャヴ! ジュリア! 警備長の容態が、安定したって・・・山を越えたみたい」
「えっ、本当に!?」
「うん、さっきリンダが・・・」
ララベルさんは、また涙ぐむ。 それを見て、二人も緊張していた表情が解け、笑顔になった。
「そっかー。まぁ、そんなことだろうと思ったよ」
「へっへっへ。しぶといおっさんだぜ」
「王族の治療部隊が出てきたのだ、死んでいなければ、治して当然という奴らだからな」
剣精も含め、それぞれが独特の照れ隠しをして喜ぶ。
「・・・で、レイル君は何に目覚めたの? いくら払ったら、こんな特殊なことになるの」
女性二人に担がれている僕を見て、ジュリアさんがいう。
「いや、ちょっと病室でうるさくしていたらリンダに叩かれて・・・結構、ダメージ残ったみたい」
ララベルさんの答えに、あぁ・・・という空気が流れる。
「無理もないぜ・・・俺も、未だにリンダにモヒカンを真っ二つに割られたのを夢に見るからな」
ジャヴさんが、肩パッドをおさえて、身震いして言う。
一緒にされたくなくて腕を上げようとするのだが、上手くいかずに諦めた。
「そんなに大事にするようなものでもあるまい・・・いっそのこと、丸めたほうが早く動けるかもしれんぞ」
剣精が冷たく言い放つ。
「ん? この髪型のクールさをわからないのかい、お嬢さん」
「気持ちはありがたいが、私の方が数倍は年上だぞ、モヒカン男」
ジャヴさんが子供に対してするように、膝に手をついて剣精に話しかける。剣精は、ふんぞり返ってそれを相手にする。
ビクッと、ジャヴさんの体が振動する。自分が話しているのが、誰なのかがわかったようだ。
「あれ・・・ところで、暗くてよく見えなかったんですが・・・こちらのかたは・・・」
「剣精様よ」
「ほう・・・この人が、うわさの・・・」
ジュリアさんは初対面なのだろうか。興味深そうに剣精を見る。一方、ジャヴさんはといえば、腰を抜かす勢いで驚いている。
「ゲエッ! 剣精っ!?」
「ふっ、どこの国の言葉か知らんが、久しぶりの相手に対して随分な挨拶だな、モヒカン男」
「わわわわ・・・ど、どうして、剣精がここに・・・」
「レイル君を心配してきてくれたの」
「う・・・む・・・」
剣精は、歯切れ悪く返事をする。
「あ、そうですか。じゃあ、僕はこのへんで失礼しますね。後は皆さんで、ごゆるりと・・・」
「まぁ待て」
立ち去ろうとするジャヴさんを、剣精が呼び止める。
「ヒッ! 痛くしないでっ!」
「誰がするか・・・。お前、レイルを運んでいけ。今日は、もう使い物にならないだろう」
「え? レイルを? それだけ?」
ビクビクと剣精の顔色を窺うジャヴさん。体の大きさと態度の大きさが反比例している。
これが何度目かわからないが、僕はジャヴさんに背負われる。
「あ・・・剣精・・・」
僕は、担がれたまま剣精に呼びかける。
「む? どうした」
「実は、王子が・・・」
王子に指示されたことを、そのまま伝えた。
「王宮に・・・?」
「はい」
「ふむ・・・」
剣精は、頭に手を当ててしばらく考え込む。
「わかった。あの王子は、道楽者だが・・・頭が悪いわけではないからな。アーツ審査がない日は、使いを出そう。それでいいか」
「はい、ありがとうございます」
「よし、行け」
「ひっ」
こうして、病院前の一行は解散をした。
その日、ララベルさんとジュリアさんは、そのまま帰宅をした。僕とジャヴさんは、その日の勤務を免除されたので、寮へと戻った。




