8-7
「レイル君、今は、コボル警備長の回復を待とう?」
懇願するようなララベルさんの言葉に、僕は頷くしかなかった。
「すみませんでした」
剣精に謝ると、手のひらをこちらに向けて、気にするなというジェスチャーをする。
「いや、いい・・・だが、私が言ったことは、覚えておいてくれ」
「・・・はい」
僕は、深々頭を下げた。謝罪と、剣精への敬意を込めた礼のつもりだった。
気持ちを整理して頭を上げると、強い衝撃が脳天から顎までを突き抜けた。
たたらを踏んで、壁に手を突く。今までに体験したことのないような攻撃だ。おそらく、背後から何かをされたのだろう。
「な・・・敵襲!?」
揺れる頭を抑えて、本能的に数歩分の距離をとる。首都の病院内、それもSSLが集まっている中で、襲撃を受けるのか。
混乱した頭で振り返ると、そこにいたのは・・・仁王立ちのリンダさんだった。
「何が敵襲か! 病室前で暴れるんじゃないよ!」
「う・・・すみません」
さっきの、アーツまがいのことをしたのを気づかれていたのか。リンダさんは鬼のような形相で、僕をにらんでいる。
手ぶらなところを見ると、今のは拳骨だったのだろうか・・・子供のころにいたずらをして父親に叩かれたことはあったが、それよりもこれは・・・
「う・・・胃に・・・きた・・・」
再び、壁に手を突く。剣精は、僕を見てゲラゲラと笑っている。いつもの剣精に、戻ったようだ。
「全く・・・もう少し、賢い子だと思ってたんだけどね」
頭を押さえてうずくまる僕をみて、呆れるように言う。そういわれてみれば、こんなにまで感情が出てくるのは自分でも久しぶりな気がする。SSLに入ってからの変化だろうか。
「病院では静かに。わかったかい」
「・・・はい」
「後で、コボルさんからも叱ってもらうよ」
「え・・・」
リンダさんは、わざとらしく、しまったという顔をして、咳ばらいをする。
「ってことは・・・リンダ?」
ララベルさんが、リンダさんと僕の方へ駆け寄る。リンダさんは、ため息をついて深くうなずく。
「まだ絶対安静だけどね。峠は越えたみたいだよ」
「や・・・やった!」
僕とララベルさんが抱き合って喜んでいると、リンダさんに引っぺがされて頭を掴まれた。反射的に頭上の手を掴むと、万力のような力で頭を握られたまま、体が上がっていく。
「わ・・・」
つい先ほども、死闘の末に同じように体をつるしあげられた記憶があるのだが・・・。
「病室では、お、し、ず、か、に!」
「り、リンダ・・・ちょっと、強いよ」
ララベルさんが止めようとするのを、剣精は腕を組んでみている。
「あの看護師は、ララベルよりも強いんじゃないか」
リンダさんが手を離すと、僕は手をつくこともできずに、そのまま床に落ちた。
「後日、面会できるようになったら本部に通知がいくから、今日はもう帰んな」
「はい・・・」
僕は、上半身を剣精に、下半身をララベルさんに持たれて、病院を後にした。




