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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第八章 代謝
79/200

8-7

「レイル君、今は、コボル警備長の回復を待とう?」


懇願するようなララベルさんの言葉に、僕は頷くしかなかった。


「すみませんでした」


剣精に謝ると、手のひらをこちらに向けて、気にするなというジェスチャーをする。


「いや、いい・・・だが、私が言ったことは、覚えておいてくれ」

「・・・はい」


僕は、深々頭を下げた。謝罪と、剣精への敬意を込めた礼のつもりだった。

気持ちを整理して頭を上げると、強い衝撃が脳天から顎までを突き抜けた。

たたらを踏んで、壁に手を突く。今までに体験したことのないような攻撃だ。おそらく、背後から何かをされたのだろう。


「な・・・敵襲!?」


揺れる頭を抑えて、本能的に数歩分の距離をとる。首都の病院内、それもSSLが集まっている中で、襲撃を受けるのか。

混乱した頭で振り返ると、そこにいたのは・・・仁王立ちのリンダさんだった。


「何が敵襲か! 病室前で暴れるんじゃないよ!」

「う・・・すみません」


さっきの、アーツまがいのことをしたのを気づかれていたのか。リンダさんは鬼のような形相で、僕をにらんでいる。

手ぶらなところを見ると、今のは拳骨だったのだろうか・・・子供のころにいたずらをして父親に叩かれたことはあったが、それよりもこれは・・・


「う・・・胃に・・・きた・・・」


再び、壁に手を突く。剣精は、僕を見てゲラゲラと笑っている。いつもの剣精に、戻ったようだ。


「全く・・・もう少し、賢い子だと思ってたんだけどね」


頭を押さえてうずくまる僕をみて、呆れるように言う。そういわれてみれば、こんなにまで感情が出てくるのは自分でも久しぶりな気がする。SSLに入ってからの変化だろうか。


「病院では静かに。わかったかい」

「・・・はい」

「後で、コボルさんからも叱ってもらうよ」

「え・・・」


リンダさんは、わざとらしく、しまったという顔をして、咳ばらいをする。


「ってことは・・・リンダ?」


ララベルさんが、リンダさんと僕の方へ駆け寄る。リンダさんは、ため息をついて深くうなずく。


「まだ絶対安静だけどね。峠は越えたみたいだよ」

「や・・・やった!」


僕とララベルさんが抱き合って喜んでいると、リンダさんに引っぺがされて頭を掴まれた。反射的に頭上の手を掴むと、万力のような力で頭を握られたまま、体が上がっていく。


「わ・・・」


つい先ほども、死闘の末に同じように体をつるしあげられた記憶があるのだが・・・。


「病室では、お、し、ず、か、に!」

「り、リンダ・・・ちょっと、強いよ」


ララベルさんが止めようとするのを、剣精は腕を組んでみている。


「あの看護師は、ララベルよりも強いんじゃないか」


リンダさんが手を離すと、僕は手をつくこともできずに、そのまま床に落ちた。


「後日、面会できるようになったら本部に通知がいくから、今日はもう帰んな」

「はい・・・」


僕は、上半身を剣精に、下半身をララベルさんに持たれて、病院を後にした。

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