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「それでは、僕は城に帰るよ」
スクル王子は、マントを翻して背を見せる。よく見ると、着ているものは王家の紋章がついていない、軍の人間が着ける丈夫なものだ。お忍びで抜け出したのだろう。
「あまり長く外出をしていると、じいに気づかれてしまうからね」
「・・・オホン。そうですな」
じいが白々しく咳払いをする。
一歩踏み出したところで、スクル王子は首をかしげて振り返った。
「ああ、そうだ・・・レイル」
「はい」
「色々あったが・・・剣精への伝言は、まだ消えていない。よろしく頼む」
「かしこまりました」
「どうやら、あまりよくない動きがあるようだ。僕も色々と聞いてみるとするよ」
「・・・」
僕は、先ほどの王子の言葉を反芻する。外患が国内にはびこっているとすれば、それは・・・。
少しだけ想像をして、慌ててかぶりをふる。今考えても、しょうがないことだ。
「これから、色々大変だとは思うけど・・・頑張ってほしい」
「もちろんです」
「よし。後は頼むよ」
側近の一人に声をかけると、王子は去っていった。
後に残った僕たちは、顔を見合わせる。王族が突然現れて、颯爽と去っていったのだ。現実味がないのも無理はないだろう。
「警備長・・・これを聞いたら、びっくりするだろうなぁ」
ジュリアさんがつぶやく。
「確かに・・・よくなったら、報告しないとな」
ジャヴさんが、頷いて同意する。
しばらく、沈黙が訪れた。皆、何をするかの考えが追いついていない。
治療部隊が合流して、マナを強制的に流し続ければ、命の心配は、かなり少なくなった。後は容態が安定するのを待てばいいことになる。
「よし、見張りは交代でやろう。全員がここにいても、しょうがない」
ジャヴさんが、手を叩いて提案する。
「ジャヴ、あんた腹減っただけでしょ・・・」
「違うよ! いや、それもあるけど、一応今晩は警備をすると考えると、分担しなきゃいけないだろ」
「そうね・・・」
少しだが、コボル隊に活気が出てきた。
一秒先にコボル警備長の命が消えるかもしれないという状況から脱出し、皆も次の行動に考えが回るようになったようだった。僕には、それがうれしかった。
「あの、僕が残るんで、皆は休憩してください」
手を挙げて、提案をする。
「・・・私も、まだ食事はいいから、ジュリアとジャヴで先に行ってて」
「おっ、そうか。じゃぁ、後で交代だな」
斧を担いで、ジャヴさんが立ちあがる。
「ジュリア、行こうぜ。随分遅い時間になっちゃったな・・・。どこか飯食うところあるかな」
「う、うん」
ジュリアさんは、ララベルさんを少し見つめてから、ジャヴさんの後を追う。
「ジャヴ、あんたのそれって、そういうプレイなの?」
「えっ、どういうこと?」
「・・・いや、いいけど」




