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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第八章 代謝
74/200

8-2

「王家と親衛隊専用の治療部隊が・・・」


ララベルさんが、信じられないという表情でつぶやく。

彼らのことをよく知らない僕も、王族の治療部隊といえば、精鋭ぞろいだということは想像がつく。


「よし、諸君」


スクル王子は、整列している臣下たちの方を振り返り、言葉をかける。


「剣鬼コボルと言えば、諸君らも聞いた名だろう。長年国を守ってきた男が、今、危篤に陥っている」


情況を知らされていなかったのか、場がどよめく。護衛の親衛隊も、治療部隊も表情が険しくなっている。


「これから、病院の治療士と交代で、毎日20時間休むことなくマナを流し込み続ける。コボルが死ぬか、君たちが干からびて死ぬかの勝負だ」

「・・・」

「傷ついた戦士の一人を救えずに、どうして王族を救えよう。諸君、これは好機だ! 王族が瀕死になった時の訓練だと思い、一滴の余力も残さずに、治療にあたれ! よいな!」

「はっ!」


治療部隊が駆け足で病室へと向かっていった。

王子と護衛、身分の高そうな老人が残ってそれを送る。


「・・・じい、迷惑をかけるね」

「ほほほ。王子に反対するよりも、とっとと済ませたほうが早いのを、この歳になって、ようやく覚えましたわい」

「・・・はっはっは」

「ほほほ。口添えはしますが・・・王と第一王子には、ご自分で釈明なさってください」

「う、うむ」


頭をかいて言い訳を考える王子に、僕たちコボル隊が駆け寄る。・・・が、即座に親衛隊に動線を塞がれる。

先ほどの会議の距離感のままでいると忘れてしまいがちだが、王族への警護としてはこれが当然なのだろう。


「いい。大丈夫だ」


スクル王子は、警護を下がらせる。


「スクル王子・・・ありがとうございます」

「いやいや、うちの城から帰る人間が襲われて危篤など、王家の沽券にかかわるからね」

「それにしても、王族専門の治療部隊なんて・・・」

「はっはっは。僕、前代未聞って言葉が大好きなんだよね」

「・・・」


じいと言われた老人が、隠れて粉薬を呑む。かなりの苦労人のようだ。

王子は、気づいているのかいないのか、そちらを見ない。


「それから・・・レイル」

「はい」


スクル王子に手招きされて、僕は近くまで行き耳を貸す。


「今回の件は、・・・おそらく軍とは無関係だ」


小声だが、確信のある声だった。


「カールにはきつめに問い詰めたが、命に誓って心当たりがないと言っていた・・・あれは、嘘を言っている顔ではなかったな」

「・・・」


それは、事態がより一層複雑になるということだ。スクル王子も、それをわかって言っているのだろう。

とにかく、僕は黙ってうなずいた。

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