8-2
「王家と親衛隊専用の治療部隊が・・・」
ララベルさんが、信じられないという表情でつぶやく。
彼らのことをよく知らない僕も、王族の治療部隊といえば、精鋭ぞろいだということは想像がつく。
「よし、諸君」
スクル王子は、整列している臣下たちの方を振り返り、言葉をかける。
「剣鬼コボルと言えば、諸君らも聞いた名だろう。長年国を守ってきた男が、今、危篤に陥っている」
情況を知らされていなかったのか、場がどよめく。護衛の親衛隊も、治療部隊も表情が険しくなっている。
「これから、病院の治療士と交代で、毎日20時間休むことなくマナを流し込み続ける。コボルが死ぬか、君たちが干からびて死ぬかの勝負だ」
「・・・」
「傷ついた戦士の一人を救えずに、どうして王族を救えよう。諸君、これは好機だ! 王族が瀕死になった時の訓練だと思い、一滴の余力も残さずに、治療にあたれ! よいな!」
「はっ!」
治療部隊が駆け足で病室へと向かっていった。
王子と護衛、身分の高そうな老人が残ってそれを送る。
「・・・じい、迷惑をかけるね」
「ほほほ。王子に反対するよりも、とっとと済ませたほうが早いのを、この歳になって、ようやく覚えましたわい」
「・・・はっはっは」
「ほほほ。口添えはしますが・・・王と第一王子には、ご自分で釈明なさってください」
「う、うむ」
頭をかいて言い訳を考える王子に、僕たちコボル隊が駆け寄る。・・・が、即座に親衛隊に動線を塞がれる。
先ほどの会議の距離感のままでいると忘れてしまいがちだが、王族への警護としてはこれが当然なのだろう。
「いい。大丈夫だ」
スクル王子は、警護を下がらせる。
「スクル王子・・・ありがとうございます」
「いやいや、うちの城から帰る人間が襲われて危篤など、王家の沽券にかかわるからね」
「それにしても、王族専門の治療部隊なんて・・・」
「はっはっは。僕、前代未聞って言葉が大好きなんだよね」
「・・・」
じいと言われた老人が、隠れて粉薬を呑む。かなりの苦労人のようだ。
王子は、気づいているのかいないのか、そちらを見ない。
「それから・・・レイル」
「はい」
スクル王子に手招きされて、僕は近くまで行き耳を貸す。
「今回の件は、・・・おそらく軍とは無関係だ」
小声だが、確信のある声だった。
「カールにはきつめに問い詰めたが、命に誓って心当たりがないと言っていた・・・あれは、嘘を言っている顔ではなかったな」
「・・・」
それは、事態がより一層複雑になるということだ。スクル王子も、それをわかって言っているのだろう。
とにかく、僕は黙ってうなずいた。




