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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第七章 軍部と闇
71/200

7-12

「少ね・・・、生きてるか。ど・・・の・・・死んだら・・・あ・・・よ」


僕は、朦朧とした意識の中で、男とは違う声を聞いて、武器番の応援が来たことを悟る。

頭が上手く回らないが、何か、伝えなければいけない言葉を言っていない気がする。僕は、無意識に女性の方へ手を伸ばす。


「お、おい、動くなって。笛を吹いたのは、お前だろ?」


女性は、男に向かって残心をとっている。女性の獲物は、槍・・・いや、棒だ。男は、うずくまって動かない。気絶しているのだろうか。

伸ばしたその手に、糸が絡みついているのを見て、僕は思い出した。何よりも、大切なことを。


「こ・・・コボル警備長が・・・!」

「ん? 警備長がどうした?」


僕は、自分の後ろの方へ人差し指を伸ばす。いや、人差し指以外を落ちるに任せたという方が正しいか。何かを指さすという行為が、こんなに大変だとは思わなかった。

ちょうど死角になっていたが、指差した方へ視線を送れば、コボル警備長の倒れた足が見えるはずだ。


「警備長! そんな・・・!」


女性の声に、一気に緊張感が出た。女性は躊躇せずに、倒れている男の頭を強く突きで打ち付けると、コボル警備長のもとへ駆け寄った。男は、全く動かなかった。

僕は、呼吸を整えながら、女性を見守る。コボル警備長の知り合いと思われる女性は、意識がないコボル警備長に呼びかけ続けている。


「笛・・・を・・・!」


僕は、声を絞り出して女性に声をかける。

状況解除の笛は、まだ吹かれていない。ここに、武器番の笛が吹かれれば、高レベルの異常事態だと伝わるはずだ。


「そうか! 笛!」


そういうと、女性は自分の胸元に手を突っ込んだ。

普段なら目をそらすところだが、今はそれどころじゃない。


「・・・どうしました、早く・・・!」

「私、今、笛持ってない・・・」

「え・・・?」


SSLが服務中に笛を持たないなど、ありうるのだろうか。いや、そもそもこの人はSSLなのだろうか・・・?

僕の体に、警戒心が戻る。これ以上ないタイミングで命を救われたから安心したものの、この人が味方という保証はどこにもないのだった。


「失礼ですが、所属は・・・」


山をかけてみる。出鱈目を言われても、僕にはわからないのだが、もしかしたらぼろが出るかもしれない。


「コボル隊の人間だよ! この人の部下だよ!」

「え・・・?」


予想外の返答に、言葉を失う。


「僕はコボル隊ですが、あなたなんて知りません」

「え・・・? そんなこと言われても・・・っていうか、そんなの後でいいから、君の笛を貸して!」

「・・・」


確かに、素性が知れないのは捨て置けないが、今はそれどころじゃない。

僕は自分の笛を差し出すと、女性はひったくるように笛をとり、輪郭が変わるくらい大きく息を吸い込んだ。


「はぁっ!」

「・・・!」


僕は、思わず耳を抑える。予想通り、とてつもない笛の音が、辺りに響き渡る。地面の小石が踊りだし、屋根の雪が落ちてきた。


「すごい・・・音ですね」

「これで、さっきの音と違うと思ってくれれば・・・」


笛を僕に投げ返す。


「後は、マナを送り続けて治療が得意な人が来るまで、待つしか・・・」


そう言って、女性はコボル警備長にマナを分け与え続ける。僕は、それを見守ることしかできなかった。

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