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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第一章 山岳の戦い
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山岳の戦い -6

両手と両ひざを地面につけている大黒猿が、まるで謝っているように見えたのだ。くだらないことかもしれないが、人間臭い所作が許せなかった。野生動物にされたことと、知性のある悪意にされたことでは、大きく意味が違う。


「僕の村を・・・家族を・・・暮らしを壊して」


僕は、大黒猿の方へと駆け出した。


「それで済むと思うなぁあっ!」


折れた両腕で、バランスの取れないまま放った全力のサッカーボールキックが、大黒猿の顔面にめり込む。が、丸太のような強靭な首を持つ大黒猿は、それでも倒れずに、僕の脚を掴もうと腕を伸ばす。僕は、軸足のマナを燃やして体軸をずらし、その手をかわす。

胸から出血が続く大黒猿も、両腕を骨折した僕も、生きることを奪い合っていた。

つり橋にはまだ他の大黒猿が残っていて、着実にこちらを目指している。


「立てよ・・・」


カラカラの喉を絞って、声を出した。


「時間もないし、もう終わらせよう」


僕の言葉が伝わったのか、大黒猿は、のっそりと立ち上がった。瞳孔が黒く開いて、死期が近い野生動物特有の、死を現在進行形で学んでいるような表情をしている。


「ああ、死ぬってこういうことか」


口を開いて、そんな言葉を発しそうだ。

折れた両腕、迫る時間、わずかなミスで全てが終わる。

そんなときに、僕のアーツは産声をあげた。

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