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「君は、山の生まれと聞いている。愛国者が多くない、国に協力的ではない地域だな」
「そんなことは・・・」
「あくまで、一般論だ。だが、残念ながらそう考えているものは多いぞ」
「・・・?」
話の趣旨が、よくつかめない。
「その制服は、丈があっていないようだが、SSLでは制服も揃っていないのかね」
「・・・私の落ち度です」
コボル警備長が謝罪する。
「以上の不手際をもってすれば、お前のSSLの職を解くことはできる」
「馬鹿な!」
コボル警備長が声を上げる。まるでいちゃもんに近い。だが、彼らが言いたいのは、それができるということだ。
「レイルよ、軍に入れ」
「・・・それは、命令ですか」
「お前の将来を考えてのことだ」
「お断りします。今はまだ、SSLでの自分しか考えられません」
「これから毎日のように、出頭させられることを考えても、かね」
ここにきてやっと、僕は彼らの目的が分かった。
軍部に入らなければ、何かあるたびに面倒ごとが続くぞ、それが面倒なら、おとなしく軍籍に身を置け・・・そう、言っているのだ。
軍がいかにアーツ・ホルダーを求めているのかが、ひしひしと伝わってくる。
「時にレイル、お前は剣精に稽古をつけてもらっているようだな」
「・・・はい」
ほう・・・と、驚きの声が広がった。
この席の中の数人は、知らなかったようだ。
「弟子をとるとは・・・あれも、長く生きて、ようやく人の情が沸いてきたか」
「血塗られた宝石の名も、いささか俗っぽくなりますな」
さざ波のように起こる笑い声の、何が面白いのかがよくわからないが、あの剣精に、そんな仰々しいあだ名がついていたと知れたのが、今日の一番の収穫なのかもしれない。
「レイルよ」
「はい」
「もう一度問う。軍に入る気はないか」
「・・・いいえ」
「ならば、国家への忠誠に疑いありとして、剣精との接触を禁ずる」
「そんな・・・」
「剣精の力は国家を揺るがす可能性がある。万が一にも、外患に渡すことがあってはいかん」
「お待ちください。SSLも公職です。奉公は果たしているはずです」
コボル警備長が抗議の声を上げる。
「ならぬ。剣精は、国家の枠を超えた存在。民間組織に近いSSLでは、任せられん」
僕は、唇を噛む。同じ国内の人間から足を引っ張られ、こんなつまらないことになるとは思っていなかった。
理由に正当性があろうとなかろうと、彼らが決定したことが是になることは目に見えていた。
コボル警備長の抗議が通じないのであれば、僕に手立てはない。
・・・そう思っていた時
「よし、そろそろ僕の出番かな」
これまで黙っていた王子が手を上げると、人々の体の向きが、海を割ったように中央を向いた。
「国家への忠誠に疑問があるというのであれば、彼の修行は、王宮でやればいい」
「王宮で・・・? 王子、それは・・・」
「ん? 駄目なの?」
「アーツ審査は、諸外国の戦士たちが集まる場。王宮で行うわけにはいきません」
「ああ、そうなの」
「王子、私が剣精に習っているのは、審査の人がいないときの夜間のみです」
白髭の男が、余計なことを言うなという表情をする。
「なら、大丈夫だね。夜に審査をする場合は、今まで通り神殿で。レイルが修行をするときは、剣精にはご足労だけど王宮に着てもらおう」
「し、しかし」
「ちなみに」
王族の特権を発揮し、スクル王子は堂々と軍人の物言いを遮る。
「不自然に夜間の予約が混み始めるようなことがあれば、どうなるか・・・わかっているだろうな」
うなじの毛が、一斉に逆立つ。火の粉舞う炎の熱風を浴びたような、確実な圧。初めて感じたが、これが王族のマナなのだろうか。
全員が、本能的に目を伏せて口を紡ぐ。
「はい・・・わかりました」
白髭の男は、弱弱しくこたえるのが、精いっぱいだった。カール少佐は、もはや敗戦を悟っているようだ。




