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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第七章 軍部と闇
64/200

7-5

それからしばらくしても、卓は揃わなかった。僕とコボル警備長、そしてすでに席についている面々も、無言だった。

一つ、また一つと席が埋まっていく。どうやら、基本的には階級や身分が上の人間が、後からくるようだ。

残る席が一つとなってから、さらに十分ほど待つ。誰も、その人物が遅いことに文句を言わない。場にいる全員が無言なのは、異様な雰囲気だった。

やがて、


「やー、どうもどうも」


白い服を着た男が、奥の扉から出てくる。全身がほぼ白にもかかわらず、着ている布の意匠の巧みさでシンプルさを感じなかった。

僕たち以外の、席についていた全員が起立する。

男は、マントをつけている。少なくとも貴族以上の身分だが・・・


「王子・・・!?」


コボル警備長の表情は、驚愕以外の何物でもなかった。

僕は、指示を仰ぎたくてコボル警備長の顔を見る。今、王子と言ったが、この男は・・・

僕が考えあぐねる間に、男は口を開いた。


「やぁ。レイル君だったね。僕はスクル。・・・コボルも、久しぶりだね」


コボル警備長が、頭を下げる。僕もそれを見て、慌てて頭の高さをそろえる。

スクル。第二王子だ。

父と母から聞いた、僕の少ない知識では、王の二人の王子のうち、弟の方で、真面目な兄とは違い、道楽好きで有名な・・・


「そう、道楽好きで有名な方だよ」


僕の心を読んだように、スクル王子は口を開く。


「頭を上げてくれたまえ。驚いただろうね。今日は、軍部が面白いことをすると聞いて、飛び入りで参加したんだが・・・なにせ、兄貴がうるさくてね。お忍びで抜け出してきたんだ」


第一王子と第二王子は仲がよくないという噂は、僕も聞いたことがある。

詳細が知らされていない出頭だったが、こんな大物が出てくるとは、僕もコボル警備長も、思っていなかった。

そもそも、こんな会議室で貴族や王族と謁見するはずがない、と部屋に入ってからも考えていた。机の高さも、椅子の高さも、周りの席と変わらない。型破りもいいところだ。


「王子、レイルはまだ・・・」


コボル警備長が、口を開く。


「知っているよ。だけど、最近はなかなか有望な人間の噂を聞かなくてね・・・軍部が隠してるのかな」

「そ、そんなことは」


カール少佐が慌ててフォローしようとするが、王子は片手をひらひらとして顔を見ることもない。冗談を真に受けるな、ということだろうか。


「まぁ、そんなわけだから、僕のことは気にしないで、いつも通りやってよ」


そう言って、中央の空いた席に悠々と座る。王子が座ったのを見計らって、各自も徐々に席に着く。


「・・・それでは、レイル・・・君に、いくつか質問をしたい。なお、本人が未成年であることを考慮し、円滑に議論を進めるため、上司であるコボル警備長にも同行してもらっている」


議事を務めるカール少佐は、明らかにやりづらそうだった。


「へぇ、未成年というと、年齢は何歳なんだい」


いきなり、スクル王子が口をはさむ。


「16歳です」


僕は、公称の年齢を答える。


「へぇ・・・若く見えるね。14歳くらいに見えるよ」

「・・・」


いきなり、本当の年齢を言われる。なるべくポーカーフェイスに努めて会釈する程度にする。コボル警備長も、無理にフォローしてこない。たれ目の、穏健派というよりは放蕩王子という見た目だが、ニコニコしながら鋭く要所を突いてくる。ひょっとすると、軍部だけの場に出頭するよりも、やりづらいかもしれない。

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