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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第七章 軍部と闇
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7-4

一時間後、僕たちは王宮へ向かっていた。

僕は、コボル警備長提案の急ごしらえの制服を着ることなく、オーバーサイズのジャケットを着ることとなった。

事務の女性に裁縫を頼みに行くと、サイズがあっていないものを着ている方が、油断されるのでは提案されたからだった。

軍の人間にあらぬ疑いをかけられても、得することは何もない。僕もコボル警備長も、なるべく、痛くもない腹を探られることのないようにしたかった。


「SSLのコボルと、レイルだ。出頭の命を受けてきた」


門番に告げると、丁寧に通してもらえた。家庭的な雰囲気を持つSSLとは違い、都会的な態度だ。

いくつもの尖塔がそびえる城を見上げて、ため息をつく。街のどこからでも目印になる王城だったが、ここまで近くで見たのは初めてのことだった。

王城の天辺を見上げると、自然と口が開いてしまう。それを見て、コボル警備長が僕に言葉をかける。


「王城は初めてか」

「はい。遠目で見ていたのに、こんなに大きいとは・・・」

「軍の本部はここにはないが、今回は王家の執務部からの依頼だから、軍の人間と一緒に王城に集まるんだ」


執務部から軍部に話が行き、そこからまたSSLに話がきたということか。回りくどい伝達に、僕は少し怖気がした。


「それじゃ、軍の本部は、どこにあるんですか?」

「首都の南だな。城門のそばだ。我々は首都の北の部署だから、普段はあまり接触はないな」

「軍隊を王城の中なりに本部を置いた方が、安全なのでは」

「そうとも限らないさ。・・・何故だかわかるか」

「・・・」

「『嫌な大人』の目線で、考えてみろ」

「なるほど・・・おそらく、わかりました」

「さすがだな。口にしないのはえらいぞ」


僕が口に出さなかったのは、その単語がこの場には物騒すぎるからだ。

クーデター。軍を王城の中に置いてしまうと、有事の際に抵抗できずに終わってしまう。


「王族には、親衛隊という、軍部から権限を切り離された軍事機関がある。王城の警備は、そこが一任されているんだ」


僕の考えを補足するように、コボル警備長が口にする。


「SSLみたいな組織ですね」

「内部的な機関という意味では、そうだな。対象は、より限定的だが」

「親衛隊は、強いんですか」

「強さか・・・うーん・・・」

「そうでもないという感じですね」

「正確に言うと、ふり幅が大きい。親衛隊は、一般のたたき上げで編成されるユニットと、貴族の方々が入るユニットがある。当然、レベルは段違いだ」


コボル警備長は、小声で答えた。


「アーツ・ホルダーもいるんですか」

「いない・・・が、匹敵する技を持つ人間はいるだろうな。彼らの目的は王族の守護で、軍事力の強化ではない。アーツ・ホルダーという制度は合わないのだろう」

「なんだか、閉鎖的な組織に聞こえますね」

「ああ。王家の組織なんて、そんなものだ。俺も誘われたことはあるが・・・堅苦しそうで、断ったよ。おかげで、今でもよく思われていない節がある」

「親衛隊に・・・! それって、すごいことなんじゃ」


コボル警備長は、苦笑いをしてごまかした。


「着いたぞ。ここだ」


コボル警備長が指さしたのは、会議室だった。SSLにも同様の部屋はあったが、閉ざされた扉一つをとっても、さすがに造りは段違いに豪華だ。


「失礼します。SSLのコボルと、レイルが参じました」

「入れ」


ドアを開けると、馬蹄型の机が目に入る。空席が目立つところを見ると、まだ全員集まっていないようだ。

席に腰掛けていたのは、カール少佐だ。口ひげを神経質そうにいじっている。


「そこで待ちたまえ」


椅子一つない場所で、僕とコボル警備長は、立って待機する。随分な扱いだなとも思ったが、何も言わずに時を待つ。

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