7-3
「僕は、城ではどう振るまえばいいでしょうか」
「うむ・・・私がなるべく矢面に立つようにするが、必ず君にも言葉が振られるだろう。その時は、変に上手く答えようとせずに、感じたままを言ってくれ」
「それで、軍部の人間への対応は大丈夫なんでしょうか」
「ああ。つまり、我々は君を信頼しているということだ」
「・・・わかりました」
信頼されていると言ってもらって、僕は少しうれしくなった。
「君が来たのが早かったから、少し時間に余裕があるな。・・・そうだ、忘れないように言っておくが、登城の際は制服着用だからな」
「制、服・・・?」
「あぁ。会うことはないとは思うが、王族のいる城に入るんだ。ちゃんとした格好をしなきゃならない」
「いえその、制服なんてありましたか。皆が着ているところを、見たことがないんですが・・・」
「む・・・? そうか、レイルはまだ式典や会議をしたことがなかったか・・・一応、存在するぞ。めったに着る機会がないから、自分のロッカーに置いている人間も多いが、な」
コボル警備長はおもむろに立ち上がった。
「ちょっと待っていてくれ。新品のものがあるか、確認してくる」
そう言って、部屋から出ていく。部屋に残った僕は、椅子に腰掛けて待つ。
数分後、コボル警備長は何着かの制服を持って戻ってきた。自分も制服に着替えている。手に持った制服とは違い、コボル警備長の制服にはいくつかの階級章がついている。
「探してきたが・・・男物の一番小さいサイズなんだが、それでも大きいな・・・ちょっと、合わせてみろ」
僕は腕を伸ばして、コボル警備長の持つジャケットに袖を合わせてみる。コボル警備長の持っている制服は、どれも一回り大きかった。
「合わないな・・・」
「もともと、年齢が・・・ですからね」
僕は正式に入隊する年齢よりも、2歳ほど年をごまかしている。
「よし、ちょっと待ってろ・・・」
再び、コボル警備長は席を外す。
戻ってきたときには、また同じようなジャケットを持っていたが、見た感じでは一回り小さいようだ。
「女性隊員用のジャケットを持ってきたぞ。ボタンは逆だが・・・サイズが合わないよりはいいだろう。後で誰かに付け替えてもらおう」
「え? このジャケットって、女物なんですか」
「ああ、男物は合わないからな・・・しょうがない」
僕が制服の袖を持って眺めていると、事務の女性が入ってきた。
「失礼します。警備長、書類の追加を・・・」
気づいた僕は、黙って会釈をする。
「む、やはり細部が男物と勝手が違うな・・・」
警備長は服に夢中で、女性が入ってきてことに気づいていないようだ。
「僕、女物なんて着たくないですよ」
「いいから、我慢するんだ。ほら、着たらお城に連れて行ってやるから」
「・・・」
事務の女性は、黙って戸を閉じて出ていった。
「ん? 今、誰かがドアを開けたか?」
「閉じたところです。事務の方が、出ていったんですよ」
「・・・今のを、見たのか」
「今の? ええ、見たんじゃないでしょうか」
「な! ま、待ちたまえ!」
コボル警備長が立ち上がる。コボル警備長がこんなに慌てる表情は、見たことがなかった。
ドアを開けたが、すでに廊下はもぬけの殻だった。SSLともなれば、事務の人の足も速いのだろうか。
「・・・いかん、城に行く前なのに、私の政治力が薄れている」
「? どういうことですか」
僕の質問には答えず、コボル警備長は立ち上がった。




