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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第六章 腐れ兎事件
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7-1

任務から帰宅の後、僕は、ジャヴさんと薬湯に漬かっていた。腐れ兎(いつの間にか、そういう名称がついていた)の匂いをとるために、リンダさんに叩き込まれたのだ。外には、SSLの隊員や腐れ兎退治に協力をしてくれた人たちが匂いをとるために、列をなして順番を待っている。ジャヴさんのモヒカンの上には、タオルが乗っているものの、モヒカンは驚異的な維持力で形状を保っていた。


「しかし、今回の兎は臭かったなぁ」

「そうですねぇ」

「といっても、この薬湯もたいがいな臭さなんだけどな」

「そうですねぇ・・・」

「おい、レイル、風呂で寝るなよ。死ぬぞ」


今までジャヴさんには黙っていたが、僕はこんな風に湯船に漬かったことがなかった。

任務の疲労と、お湯の心地よさでうとうとしていたところまでは、覚えている。


目が覚めると、自分の部屋だった。カーテンの隙を縫って窓の外から入る明かりは、昼間のそれだ。

つまり、まだ夜勤の時間ではないということだ。まずは、寝坊をしていないことに安堵した。


「寝てしまったのか・・・」


よく思い出せないが、寝巻は着ている。眠りが深かったのは、薬湯のせいだろうか。首をかしげながら起き上がると、机の上に手紙が置いてあった。

差出人の名前はコボル警備長のもので、夜勤に出ずに、コボル警備長のもとへ向かえという指示だった。

手紙を読んで頭がさえてしまった僕は、着替えてSSLへと向かった。


「失礼します」

「む、早いな」

「目が覚めたので、参りました」


コボル隊長は、相変わらず書類に埋もれていた。いつもよりも一段高いのは、腐れ兎の事件の処理だろうか。


「その、まぁ、気を楽にしろ」

「? はい」


椅子に座れというジェスチャーを受けて、僕は腰掛ける。コボル警備長を訪れて待たされるのは、よくあることだ。


「ジャヴは・・・見かけたか?」

「いえ。僕が来たときは見ませんでした。まだ寝ているんだと思いますが」

「そうか」

「僕が呼ばれたのは、ジャヴさんのことですか?」

「いや・・・うーん、そうだな。何から話したらいいか・・・まず、デュランのことだが」

「デュランさん・・・ですか」

「ああ。昨日のことは、すまなかった。あいつの独断で、君を危険な目に合わせたことを、責任者として詫びたい」

「いえ、何もなかったことですし」

「そうもいかん。あいつは、しばらく謹慎にした」

「・・・わかりました」

「ベテランのあいつが、何故あんなことをしたのか、原因はわからないが、復帰したら許してやってくれ」

「もちろんです」

「すまないな。・・・では、もう一件だが、この書類にサインをしてくれ」


そう言って、コボル警備長は山の一番上の紙をとって、僕に差し出した。


「これは・・・報告書ですか」

「君は読み書きができるんだったな。話が早くて助かる」

「父に習いました。簡単な読み書きと計算ができないと、田舎者は騙されるからと」


そう言いながら、僕は内容に目を通す。が、ところどころに難しい言い回しがあって、よく理解できなかった。


「すみません、ここの部分はなんて書いてあるんですか」

「外憂だな。つまりは、この報告書は怪しいやつがいたから退治しましたってことだ」

「わかりました。ありがとうございます」


僕はサインをして書類を返す。


「そのうち、テンプレートなしで書けるようになってくれると助かるよ」

「・・・頑張ります」

「・・・では、ようやく本題だ」

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