表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第六章 腐れ兎事件
55/200

6-7

「どうよ、俺のフライング・デス・ソーサーは!」


名前はともかく、細かい調整が必要だろうと思われる、すごい技術だ。離れた兎に一発で命中させたことも考えると、ジャヴさんは見かけによらず繊細な技の持ち主なのかもしれない。


「後でほめますから、今は逃げましょう!」


ガッツポーズをとるジャヴさんを連れて、再び走り出す。


「あとちょっとしたら、応援がくるからそれまでしのぐぞ」


僕は走りながらうなずく。


「そうはいかん!」


先ほどのリーダー格の男が、目の前の角から飛び出てきた。


「・・・マジかよ」


自分のホームで先回りされたことに、ジャヴさんは動揺を隠せない。


「お前らとしゃべっている時間はない。おい! やるぞ!」


足を止めたところに、僕たちの後ろから、無傷だった方の男が追いついてきた。

僕たちには最悪な、挟撃の形になる。


「レイル、どっちが強いかわかるか」

「ええ!?」


突然の質問に面食らったが、少し迷った後にこたえる。走った後の息の切れ方、姿勢のブレ、どちらが強いのかは答えづらいが、姿勢や動作が少しでも剣精に近い方といえば・・・


「たぶん、若い方です」

「よし、俺がそっちをやる。お前はジジイを片付けろ」

「大丈夫なんですか」

「自分の心配をしろ。いいか、俺は自分のことに必死で振り返らないから・・・アーツでもなんでも使え」

「・・・はい」


アーツは、人目に触れて特殊性がなくなれば、価値を失う。ジャヴさんはそれを気遣ってくれたのだろう。


「だが、無理に倒そうと思うな。時間が経てばこっちの勝ちなんだ」


裏を返せば、相手は死に物狂いで襲ってくるということだ。そう思っているうちに、リーダーの男がナイフを抜いて襲い掛かってきた。相手の抜刀に対応して、僕も両刀の構えをとる。

脱力して、目と足にのみマナを使う。相手の攻撃をかわすことに注力した、いつものフォームだ。

いつも剣精との特訓で使う型をとったことで、僕は急速に落ち着きを取り戻した。足の運び、腰の捻り、どこをとっても、この男は剣精より遅い。

呼吸を乱しながら振り回すナイフは、かわすのにさほど苦労はいらなかった。

後は、寸止めがないという恐怖と、はやる気持ちとの闘いだ。振り返る余裕はないが、ジャヴさんのほうも気になる。


「ぐわっ!」


さっそくジャヴさんの悲鳴が聞こえた。接近戦は苦手なのかもしれない。


「ジャヴさん!」

「気にするな! 自分のことだけ考えろ!」


確かに、目先のナイフへの対応で精いっぱいで、フォローなどはできそうにない。


「シッ!」


僕の喉を狙うナイフを、すんでのところでかわす。


「ガッ! くそおっ」


声だけを聴くと、明らかにジャヴさんは劣勢だ。防御をしていて援軍を待っていては、間に合わないかもしれない。ジャヴさんがやられたら、二対一の状況になるのも、非常にまずい。

と思うと同時に、目の前に黒いものが飛んできた。思わず、ナイフではじく。

リーダー格の男が、兎の子供を投げつけてきたのだ。手元を確認すると、ナイフに串刺しになった兎の子供と、多量のぬめった油がついている。これでは、切れ味は期待できない。


「くそっ」


男がニヤリと笑う。

僕は、ナイフを地面に投げて、左手のナイフを利き手に持ち替えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ