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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第六章 腐れ兎事件
54/200

6-6

「んじゃ、いくぞ」


僕が頷くと、ジャヴさんは大きく息を吸い込み、長く笛を吹く。緊急の合図が、ただでさえ物々しい雰囲気の街を揺らす。

武器番の緊急の笛となれば、優先的にSSLが駆けつけてくるはずだ。

三人組の男達は、驚いた顔でこちらを見た後、顔を見合わせた。


「チッずらかるぞ」


リーダー格と思われる男が、撤退の指示を出す。僕たちの望んでいた結果だ。後は、SSLの皆で追い詰めるのが、一番危険の少ないルートだ。

ほっとした瞬間、信じられないことが起こった。リーダーらしき男の頭上に手斧が振ってきたのだ。


「うわっ!」


慌てて避けたものの、頭部に手斧がかすったようだ。フードが外れて、素顔があらわになる。


「くそ、仕留められなかった」

「いつの間に投げたんですか」

「へっへっへ。見えなかったろ。怪我を負わせられれば、楽になったんだけどな」


だが、ジャヴさんの思惑とは異なり、事態は暗転する。


「く・・・」

「大丈夫ですか」


頭をおさえた男に、二人の男が駆け寄る。これで、上下関係がわかってきた。斧が当たった男が、やはりリーダーのようだ。


「私にかまうな。それよりも、顔をみられた! 殺せ!」


斧が当たった男は、流血が始まった頭を押さえながら、指示を出した。


「げ・・・ご安心ください! 私、何も見ていない上に口が堅い男です」

「殺せ!」


部下と思われる男二人がナイフを抜いて追ってくるのを見て、ジャヴさんと僕は踵を返して駆け出した。


「こっちだ!」


ジャヴさんの後を追う。人通りの多い方を目指しているようだ。

走って角を曲がり、一度振り返る。相手の足音は続いている。追ってきているのは間違いないようだ。

そこで、僕は先ほどに続きまたしても信じがたいものを見る。

僕たちが通ってきた曲がり角の、ちょうど曲がり終わったところ。地上3mくらいのところに、円盤のようなものが浮いている。目を凝らしてよく見ると、手斧が高速回転して、ゆっくりと降りているのだ。

こんなことをするのは、ジャヴさんしかいないのだが、手首にどれだけのマナを集中させれば、こんな芸当ができるのか。兎の時もそうだったが、手斧の練度は並外れている。

僕たちを追ってきた先頭の男が、角を曲がったところで、ちょうど手斧は男の目の前の高さになっている。


「なっなんだ、これは」

「何をしている! 止まるな!」


先頭の男は、驚いて足を止めた。すぐ後ろを走っていた男は、大外を回って止まった男を追い抜こうとしている。

その瞬間、足を止めた男の下腹部に、手斧が炸裂した。

ジャヴさんが、アンダースローで斧を投げたのだ。


「ぎゃああっ」


たとえ何か防具をつけていても、あれだけの勢いで下腹部に斧が当たったら、行動できないだろう。先頭だった男は、のたうち回っている。


「よし、一人!」


恐ろしい手際だ。逃げながら足止めのために手斧を投げ、動きが止まったら遠距離から攻撃する。

逃げながら攻撃するのが得意と言っていたのは、伊達ではない。


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