6-5
「やるしかない」という言葉を、僕は何度も反芻した。つまり、人と人との殺し合いになるということだ。
SSLに入った以上覚悟はしていたが、まさかこんなに早くその時が訪れるとは思っていなかった。父親が生きていたら、こんなことは絶対に反対していただろう。
果たして、僕に人を殺せるだろうか。
「見ろ」
ジャヴさんに言われて、ハッと現実に戻される。
ジャヴさんが指さす方を見ると、男たちがずた袋から呪われた黒い兎を取り出して逃がしている。
驚いたことに、最初に見た兎よりも二回りほど大きい。僕たちが親だと思っていた兎は、まだ子だったようだ。
「あいつらが、この兎を・・・」
「ああ。ふざけた真似しやがって。だが、これであいつらがカタギじゃないことがわかったな。・・・レイル、お前はとっとと逃げろ」
しっしっと、手を振って僕を逃がそうとする。僕は、それに従わない。
「ジャヴさん、僕も残ります」
「バカ言うな。俺からしたら、大声で助けを呼びに行ってくれるほうが、よっぽど助かるっての」
「でも、もしあいつらが襲い掛かってきたら、一対三ですよ。逃げて回り込まれたら、一貫の終わりです」
「そりゃ・・・まぁ、そうなんですけど」
「ジャヴさん、僕はアーツ候補の技を持っています。一対一なら、おそらく勝てます」
「・・・本当か?」
半分嘘だ。僕のアーツ(候補)は、人間相手に当てるところまで練習をしていない。だが、最悪の事態でジャヴさんがやられるよりはいいと思ったのだ。笛を吹いて援軍が来るまで、逃げまくって敵の目を僕とジャヴさんに分散させれば、それが勝ちだ。
逡巡の後、ジャヴさんはかぶりを振った。
「いや、待て。ダメだ。お前に何かあったら、ララベルに殺される」
この人は、賊よりもララベルさんの方が怖いのだろうか。
泣きそうな顔になりながら、斧を持って出ていこうとするジャヴさんを、慌てて止める。
「お、落ち着いて、何パターンか考えましょう。まず、笛を吹いて相手が逃げた場合、二人とも深追いはしない」
「おう、それが理想のパターンだな」
「追いかけてきた場合、二人で逃げる」
「おう」
「逃げても追いつかれそうになったら、二人で戦う」
「・・・」
「さっきも言いましたけど、一対一ならなんとかなります。だから逃げながら一人だけ数を減らせれば・・・」
「逃げながら・・・? ちょっと待て、それって・・・」
急に、ジャヴさんの顔が輝きだした。活路を見出したのだろうか。
「?」
「俺の得意パターンだぜ」
ジャヴさんは、両手でモヒカンを整えながらニヤリと笑った。




