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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第六章 腐れ兎事件
52/200

6-4

「あ! ジャヴさん、これ! 鼻のマナを切ると、少し楽になりますよ」

「マジか! って、鼻だけって、どうやるんだ!?

「え・・・? だから、鼻だけです」

「マジかよ・・・普通できないだろ。器用だな、お前・・・」


僕とジャヴさんは、淡々と兎をつぶしていく。あまりに小さい兎は、体外に出たらすぐに死ぬようだが、油断はできない。すでに、僕とジャヴさんの靴は粘性の液体で赤黒く染まっている。


「とりあえず、全部潰したか・・・?」

「わからないです。なにせ数が多すぎます」

「一匹でも逃がしたら、後々すんげー怒られる気がするんだよなぁ」

「でも、あちらこちらでこいつが発生しているとしたら、SSLだけで全部駆除できるんでしょうか」

「確かに・・・きついかもな。住民総出の作業になるかもしれないな」


一息ついたところで、ジャヴさんは思い出したように手をたたいた。


「そうだ、うやむやになっちまってたが・・・ディランのおっさんはどうしたんだ」


僕は、本当のことを言おうか一瞬だけ迷った。


「はぐれたのか? あのおっさんにしては珍しいな」


「実は、笛の音が鳴ったほうに家があるとかで・・・南東の方向へ走っていきました」


僕の言葉を、ディランさんは信じられないという表情で返す。


「は? ディランのおっさんが?」

「はい」

「信じられねーな・・・日ごろ、人には規則規則ってうるせーのに。しかも、新人を置いていくなんて」

「・・・」


口には出さなかったが、僕も同感だった。家族のためとはいえ、ディランさんの行動は、プロにあるまじきものだった。


「まぁいい。おっさんの話は、本部に戻ってからだ。とりあえず、目の前のコレを何とかしようぜ」

「シッ! ジャヴさん・・・」


僕は、右手を挙げてジャヴさんの動きを制して、そのまま前方を指を差した。

複数・・・いや、三人の人がいる。こちらには気づいていないようだ。笛が吹かれたときに外出するとは・・・観光客が迷ったのだろうか。

声をかけようとした僕の口を、ジャヴさんが塞ぐ。


「待て、レイル・・・様子がおかしい」

「え!?」

「笛の意味は分からなくても、この異臭と雰囲気に気づかないわけがないだろ」

「じゃあ、火事場泥棒とかですか?」

「それならまだいいが・・・」


ジャヴさんは、いつになく真剣な顔だ。


「レイル、剣精に何か習ったか」

「何かって・・?」

「こう、相手を一発で倒す必殺技みたいなやつだよ」

「そんな技ないですよ。剣精ならできるかもしれませんけど」

「なら、ここからあの3人組を一瞬で気絶させる技とかは・・・」

「ありません・・・そもそも、まだ攻撃を習っていないんです。あの、あの人たちは危険なんですか」

「そうか、わかった。・・・いいか、よく聞け。俺は今から緊急の笛を吹く。お前はその前に、ここから逃げろ」

「ジャヴさんはどうするんですか」

「俺も逃げるよ! 笛を吹いた後に、あいつらが穏便にしていてくれるならな。そうじゃないなら・・・やるしかない」

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