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「あ! ジャヴさん、これ! 鼻のマナを切ると、少し楽になりますよ」
「マジか! って、鼻だけって、どうやるんだ!?
「え・・・? だから、鼻だけです」
「マジかよ・・・普通できないだろ。器用だな、お前・・・」
僕とジャヴさんは、淡々と兎をつぶしていく。あまりに小さい兎は、体外に出たらすぐに死ぬようだが、油断はできない。すでに、僕とジャヴさんの靴は粘性の液体で赤黒く染まっている。
「とりあえず、全部潰したか・・・?」
「わからないです。なにせ数が多すぎます」
「一匹でも逃がしたら、後々すんげー怒られる気がするんだよなぁ」
「でも、あちらこちらでこいつが発生しているとしたら、SSLだけで全部駆除できるんでしょうか」
「確かに・・・きついかもな。住民総出の作業になるかもしれないな」
一息ついたところで、ジャヴさんは思い出したように手をたたいた。
「そうだ、うやむやになっちまってたが・・・ディランのおっさんはどうしたんだ」
僕は、本当のことを言おうか一瞬だけ迷った。
「はぐれたのか? あのおっさんにしては珍しいな」
「実は、笛の音が鳴ったほうに家があるとかで・・・南東の方向へ走っていきました」
僕の言葉を、ディランさんは信じられないという表情で返す。
「は? ディランのおっさんが?」
「はい」
「信じられねーな・・・日ごろ、人には規則規則ってうるせーのに。しかも、新人を置いていくなんて」
「・・・」
口には出さなかったが、僕も同感だった。家族のためとはいえ、ディランさんの行動は、プロにあるまじきものだった。
「まぁいい。おっさんの話は、本部に戻ってからだ。とりあえず、目の前のコレを何とかしようぜ」
「シッ! ジャヴさん・・・」
僕は、右手を挙げてジャヴさんの動きを制して、そのまま前方を指を差した。
複数・・・いや、三人の人がいる。こちらには気づいていないようだ。笛が吹かれたときに外出するとは・・・観光客が迷ったのだろうか。
声をかけようとした僕の口を、ジャヴさんが塞ぐ。
「待て、レイル・・・様子がおかしい」
「え!?」
「笛の意味は分からなくても、この異臭と雰囲気に気づかないわけがないだろ」
「じゃあ、火事場泥棒とかですか?」
「それならまだいいが・・・」
ジャヴさんは、いつになく真剣な顔だ。
「レイル、剣精に何か習ったか」
「何かって・・?」
「こう、相手を一発で倒す必殺技みたいなやつだよ」
「そんな技ないですよ。剣精ならできるかもしれませんけど」
「なら、ここからあの3人組を一瞬で気絶させる技とかは・・・」
「ありません・・・そもそも、まだ攻撃を習っていないんです。あの、あの人たちは危険なんですか」
「そうか、わかった。・・・いいか、よく聞け。俺は今から緊急の笛を吹く。お前はその前に、ここから逃げろ」
「ジャヴさんはどうするんですか」
「俺も逃げるよ! 笛を吹いた後に、あいつらが穏便にしていてくれるならな。そうじゃないなら・・・やるしかない」




