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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第六章 腐れ兎事件
51/200

6-3

「あれを・・・」


僕が指さす方向を、ジャヴさんの目が追う。


「兎・・・? っていうか、ディランのおっさんは・・・って、くせっ! なんだこいつ」

「恐らく、変異呪種だと・・・」

「うわーくせーくせー」


ジャヴさんは鼻をつまんで眉間にしわを寄せる。


「・・・けどまぁ、弱そうでよかったわ」


背中から手斧を抜くと、左手で兎を指さし、兎に投げつけた。高速で回転する手斧は、ほぼ直線の軌道を描いて兎に命中した。

刃が肺を突き破ったのか、兎は口から血を吐くと、声なき悲鳴をあげて絶命した。

全力の、まったく迷いのない一撃。僕は、手斧の威力とジャヴさんの思い切りの良さに驚嘆した。


「問題解決っと。これは金一封出るかな」


そう言って、ジャヴさんは手斧を回収するために兎の死体に近づく。


「ん・・・うおお! 何だこりゃ!」


驚くジャヴさんの足元を見ると、兎はまだ動いている。

絶命したと思った兎の体が膨れ上がったと思ったら、その腹の中から蜘蛛の子を散らすように小さな生き物が出てきた。

最初は巨大な寄生虫かノミかと思ったのだが、よく見ると小さな兎たちだ。


「チッ、腹に子供がいたのか・・・」


苦々しくつぶやく。


「可哀そうだが、逃がすわけにはいかねえんだ。・・・レイル、お前も手伝え」


そういうと、石畳に逃げ惑う兎の子をブーツでつぶし始める。僕もそれに倣う。たちまち、辺りに今まで以上に悪臭が蔓延する。哀れなこの生き物は、胎にいる時からすでに腐っているようだ。

驚いたことに、潰した子供の腹から、さらに小さい兎が湧き出てくる。目はまだ開かず、歩くこともできないようだが、さっそく母体の腐った肉を食べ始めている。


「マジかよ。こいつら、腹の中にいる時点で、もう孫がいるのか。・・・クレイジーだぜ」


そう言って、力強く、もう一度踏みつぶした。そこら中に散らばって逃げようとする兎を、僕とジャヴさんはしらみつぶしに処分していく。

中には、絶命する前に腹を突き破って生まれてくる兎もいる。命として壊れている。それがこの兎への印象だった。


「くそっ。まったく危険なところはないが・・・気が滅入るぜ」

「・・・」


僕の意見は、違う。直接的に命の危険はないが、恐ろしいのは、この生き物の爆発的な繁殖力だ。腹の中で交尾を続けるのなら、餌さえあれば一匹でいくらでも増えることになる。

そして、街中に漂うこの悪臭が引き起こす弊害を考えると、倉庫の中に一匹でも兎が入れば、多くの食料が売り物にならなくなるだろう。首都に危機的な状況が起きているのがわかる。


「ジャヴさん、そこの後ろに逃げました」

「おう」


やや離れた小さな子兎を、石を投げてつぶす。さっきの手斧の時も思ったのだが、抜群のコントロールだ。


「ジャヴさん、見た目によらず器用なタイプなんですね」

「見た目通り、繊細と言ってくれたまえ」


軽口をたたく余裕があるのかと思ったが、顔を見ると真っ青だ。僕たちの体には、飛び散った体液が着いてしまっている。風が吹こうが、匂いが離れない。


「ゲロゲロゲロ」


ジャヴさんが、モヒカンを壁につけて胃の中の物を戻してる。僕も、気分は最悪だ。段々息も苦しくなってくる。

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