表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第五章 剣精の修行
49/200

6-1

それから数日間、アーツ審査のない日は剣精の下で修業をして過ごした。アーツの名前については、保留のままだ。

剣精からは攻撃についてはあまり習わず、ひたすら避ける練習を繰り返していただけなので、自分が強くなっているという実感はなかったが、逃げ足と避け勘は成長しているような気がする。


「何か危険な状況になったら、とっとと逃げろ」


というのが、今のところの剣精の教えだった。


ある日、夜勤で剣精のところへ向かう途中だった。僕とディランさんは、雑談をしながら夜道を歩いていた。


「しかし、お前もよくやるな。貯金してるのか?」

「え?」


僕はディランさんの言葉がよく理解でくなくて、聞き返した。


「最低限の休みしかとっていないらしいじゃないか。あまり根を詰めると、ミスや怪我に繋がるぞ」

「あぁ・・・」


休日はまとめて取りたかったので、なるべく連続して勤務に入り、たまの休みは寝て過ごす・・・というのが、僕の生活パターンになっていたのを言ったのだろう。


「若いうちは、回復が早いからな。多少の無理は効くかもしれないが、休むのも仕事のうちだぞ」

「・・・わかりました」


実をいうと、休みをなるべくとらないようにしているのは、貯金以外の理由があるのだが、少し思うところがあって、その場では言わないでおいた。


「剣精の修行はどうだ? 厳しいんじゃないのか」

「そうですね。ちょっとずつ慣れてきましたけど、慣れたころにまた修行のレベルを上げてくるので、結局いつも大変です」

「そうか。俺はあまり剣のことは分からないが・・・剣精のことだからきっと、深い考えがあってのことなんだろうな」

「・・・」


うまくコメントができなかった。剣精は、その場のノリで方針を決めているように思える反面、戦闘の考え方やマナの理論など、深い造詣を見せるところもある。腕が確かなのは間違いないが、師としては、よくわからない。


「とにかく、たまには夜勤じゃない週も作れよ。ずっと夜勤だと疲れがたまるからな」

「わかりました」


そういうと、僕は休みの過ごし方について考えを巡らせる。日常で必要なことは、ほとんど寮がやってくれるので、お金はたまる一方だった。夜勤なので給与が高い一方、日中買い物に出かけることも少なくなったので、今月の給与はなかなかの額になるのではないだろうか。・・・SSLの仕事を本格的にやっていない身分でお金をもらうのは、少し気が引ける。


もう間もなく、神殿が見えるというところで、街の暗闇をひっかきまわすような甲高い音が短く三回聞こえた。僕とディランさんは歩みを止める。


「聞こえたか」

「はい」

「笛番の確認音だな。・・・剣精にも聞こえたはずだ。解除されるまで、このまま待機しよう」

「わかりました」

「音からすると、かなり遠い場所のようだが・・・警戒を怠るな」


僕とディランさんは道の真ん中に背中合わせで立ち、警戒をする。二人とも、いつでもナイフを抜けるように構えをとっている。

何事もなければ、やがて笛番と武器番の二人が吹く解除の笛が聞こえてくるはずだ。

・・・だが、次に聞こえてきたのは、単独の笛だった。それも、武器番の笛だ。


「トラブルのようだな」


ディランさんが言う。僕が夜勤に入るようになって、武器番の笛が吹かれたのは初めてだった。

ところどころで家の明かりが着き、窓が開く。街の人たちも、今のが武器番の笛だと気付いたのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ