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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第四章 SSL
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剣精の修行 -1

僕やジャヴさんのように、もともと首都の住民ではなかった人間には、寮の部屋が与えられる。ベッドと簡単な棚しかない質素な部屋だが、一応個室があてがわれるし、希望者は食堂で食事もとれる。夜勤、日勤の両方に対応しているので、好評だ。


「うわ、何このガイコツ。本物?」

「怪しげな土産物屋で買ったんだ。いかしてるだろ」

「・・・偽物ってことかしら。この瓶に入っているトカゲの標本はなに?」

「怪しげな土産物屋で買ったやつだな。ドラゴンの親戚らしいぜ」

「あんた、怪しげな土産物屋以外で買い物しないの・・・?」


一週間の日勤をディランさんと無事にこなし、一日休みを取った後、僕はララベルさんと一緒に、ジャヴさんの寮の部屋にお邪魔していた。

僕とジャヴさんが次の日の夜から夜勤になるので、体を慣らすために耐久夜更かし大会という名目らしい。


寮の部屋とは思えないほどカスタマイズされたジャヴさんの部屋を、僕たち二人が珍しそうに眺める。

壁一面におどろおどろしい仮面や斧、謎の毛皮などがかけられていて、窓はなぜか打ち付けられている。風通しが悪くなった部屋は、何か怪しげな匂いがする。


「やっぱり、レイル君の部屋にいこうか。そっちのほうが、落ち着いて話せる気がする」

「あんまり落ち着いても、眠くなってしまうので・・・」

「あぁ、そっか。耐久夜更かしだったね。これくらいの居心地の悪さが、ちょうどいいのかな」

「なんでだよ! 俺の部屋は最高にクールだろ! それに、こいつの部屋なんて何もないぞ」

「あれ? もうレイル君の部屋に行ったことあるの?」

「ある日、突然、ドアを突き破る勢いで・・・」

「へへ・・・斧でドアを突き破って、顔を出すってやつ、一回やってみたいんだ」

「あんたが寮を追い出されるのも遠くないわね・・・」


ララベルさんは、ため息交じりに頭を抱える。

ちなみに、ララベルさんは実家から勤務をしている。


「レイルの部屋は、服と身の回りの物しかない、つまんない部屋だぞ」

「清潔感あっていいじゃない」

「バカいうな。14歳の男の部屋が清潔感なんてあってたまるか! 色々なものが染みついた布がそこら中に転がってなきゃ、いけないんだ」

「まぁ・・・私も弟がいるから、その辺は分からなくもないけど・・・」

「それなのに、こいつときたら、部屋に服とナイフしかねーんだ。なんか怖いよ!」

「世間からすれば、ジャヴさんの部屋の方が怖いんじゃ・・・」

「俺は好きなものに囲まれてるだろ。部屋に入ったら、ああ、こんなのが好きなんだなってわかるだろ。お前の部屋には、それがないんだよ」

「・・・」

「こう、胸の大きい女の絵とか、そういうのがあると、お兄さん嬉しいなぁ・・・って」

「・・・」

「ちょっと! レイル君に変な考えを植え付けないでよ」

「だまらっしゃい! ディランのおっさんやコボル警備長も、絶対部屋には自分の趣味のものがあるはず。ジュリアなんて、部屋に入るのも恐ろしいわ」

「う・・・まぁ、ジュリアは・・・そうね」

「だから、な。レイル」

「・・・はい」

「男なら、他の男をドン引きさせる何かをもって、初めて一人前なんだぜ」

「・・・そうでしょうか」

「なんなら、この部屋で気に入ったものがあったら、持って帰っていいぜ」

「いや、それはないですけど・・・」

「ちょっとくらい部屋を見回せよ!」

「レイル君、こいつの話は10パーセントくらいでちょうどいいからね。あんまり真面目に聞かなくていいよ」

「よし、基本的なところからいこうか。まず、胸か、尻か。それだけでいいんだ」


ジャヴさんは、チラリとララベルさんの方を見る。


「いや、その・・・」


僕も、ララベルさんの方を見る。ララベルさんはすぐにサッと目をそらすが、止めはしないようだ。


「まな板よりも、マシュマロだろ、な。」

「!?」


そういうと、ジャヴさんは再びララベルさんを見る。その顔は、あきらかに悦を隠し切れない。


「コボル隊は、今二つの派閥に分かれているんだ。君の力が、必要なんだよ」

「ちょっと、コボル隊で、そんなこと話してるの!?」

「夜勤の楽しみっていったら、猥談よ。世界の常識だぜ」

「おっさんたち二人は、年を取ると尻になるとか、訳の分からんことを言ってるんだ。俺一人じゃ、旗色が悪い。君には重大な責任がかかっているんだよ」

「そんな、勝手に・・・」

「さぁ! まな板よりマシュっ!」


掌底がジャヴさんの顎を揺らす。モヒカンがぐるんと回転すると、眠るように崩れ落ちた。


「いちいち、ニヤニヤしながらこっち見るんじゃないわよ・・・」

「・・・」

「レイル君」

「はっはい」

「こんな風にはならないでね」

「・・・」


無言の圧力を感じて、僕はこくこくと頷く。

物言わぬジャヴさんを置いて、ララベルさんは帰り支度を始める。


「あの、送って・・・」

「大丈夫よ。ありがとう。今は・・・」


そういうと、ララベルさんは槍を持つ。家鳴りだろうか。みしり、と木が軋むような音がした。


「機嫌が悪いから」

「はい・・・」

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