SSL -9
「戻りました」
「ただいま帰りました」
「ディランとレイルか。お疲れ」
僕たちはコボル警備長の部屋に入り、任務終了の報告をする。
「レイル、最初の任務はどうだった」
「色々と、刺激になりました。街には、まだ慣れませんが・・・」
「そうか。なに、すぐに慣れるさ。地形や場所だけはなく、街の人の顔も覚えるんだぞ」
「はい」
「そうだ、すまないが、ディランと話がある。部屋の外で待っていてくれないか」
「わかりました」
言われるがまま、僕は廊下で待つ。仕事帰りのSSLメンバーたちが、通りすがりに僕をぶしつけに眺めていった。朝の挨拶をしただけで、話をしたこともない人が大勢いる。まだまだ顔なじみになるのは遠そうだ。
中で何を話しているのかは聞こえなかったが、二人とも少し大きな声をあげている。難しい話し合いのようだ。
「レイル、入ってくれ」
部屋から声がかかったので僕は入室する。コボル警備長の側にディランさんが立っていて、二人で僕の方を見ている。
「実は、剣精からSSL宛に書状が届いている。」
そう言って、コボル警備長は僕に羊皮紙を渡す。国公認の印が押されてある紙には、
受験者のレイルについて
アーツ・ホルダーの見込みがあるため
剣精の下での修練を提案する
可能な日時を返信されたし
短く、これだけ書いてあった。提案するとは書いてあるが、有無を言わさぬ書き方だ。
「この書状は、軍部のカール少佐にも見せている。なかなか、複雑な表情をしていたよ」
コボル隊への追及はできなくなったが、アーツ・ホルダーの人数が増える可能性がある。痛し痒しといったところだろう。
「われわれとしても、君に強くなってもらうことには大賛成だ。だが、SSLの任務を始めたばかりで、すぐに引き渡すのもどうかと思ってな」
そういって、コボル警備長は腕を組む。
「SSLの勤務を続投しつつ、剣精から指導を受ける時間も作りたいということですか」
「そうだ」
なかなかハードルが高い条件だ。勤務後に剣精のところへ行っても、せいぜい1,2時間しか時間がとれないような気がする。
「そこでディランと話をしたんだが、方法は一つしかなさそうだ」
「何か考えがあるんですか」
「ああ。まず、剣精は基本的にアーツ審査を毎日20時間受け付けている」
「えっ」
僕は驚いて声を出す。
「それじゃ、いつ寝ているんですか?」
「剣精は、睡眠をとらない。人間のときからそうだったのかは、知らないが・・・そういうものらしい」
「ちなみに、食事もとらないようだぞ」
驚きの事実が次から次へと出てくる。この前に会った剣精は人間らしい・・・というより、普通の人よりも人間くさいところがあったので、彼女が精霊であることを忘れてしまうほどだったが、こうして話を聞くと、やはり人間とは違う存在だというのを思い知らされる。
「それで・・・方法というのは」
「あぁ、そうだった。アーツ審査は一日中受けつけているが、人気があるのはどうしても昼の時間だけでな。夜は、どうしても時間が合わない場合や特別な事情がある人間しか受けないんだ」
「コンディションを万全にして審査を受けたいという人が多いんだ」
「確かに、気持ちはわかります」
「そのため、夜勤の時間帯は比較的剣精の手が空いていることが多い。木刀か何かを渡しておけば、延々と降り続けているんだが・・・どうせなら、お前の訓練の時間をそこにあてられるかと思ったんだ」
「なるほど・・・」
「ちょっかいをかけられる衛兵の不満も、これでなくなれば・・・」
コボル警備長が、何か気になることをつぶやいた。
「ちょっかい?」
「いや、なんでもない」




