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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第三章 剣精とアーツ審査
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剣精とアーツ審査 -4☆

「私は、人間を傷つけることができない。したがって、私からの攻撃といっても寸止めになるが、それでもいいか?」

「もちろんです」


聞いていた通りだが、ひと安心する。剣精が僕を本気で相手にすれば、僕の命は数秒も持たないだろう。


「では・・・」


剣精が持っている木刀が、わずかに面を上げた。僕が迎え撃とうと構えたその刹那、僕の目の前に木刀が付きつけられている。先端の木目と細かいささくれが、よく見える。土埃が、剣精の後を追って飛んできた。


「もう少し、遅い方がいいか」

「はい・・・」

「うん、素直でよろしい」


剣精の攻撃に全く反応できなかった僕は、いよいよ自分が場違いなところに来てしまった気がする。ここにきてから、半刻ほど経っただろうか。今のところいい場面は全くなかった。


「それでは、ゆっくり攻めるからな」


改めて、剣精が切りかかってくる。確かに、繰り出される攻撃は、僕がギリギリ防げるか防げないかくらいの速度まで落ち着いた。常識的な速さは、つまり剣精からすると、相当に手を抜いているのだろう。


(これなら、いつかは・・・いやでも、やっぱり、あ、そんなことされるときつい)


剣精が大振りに剣を払う。僕はしゃがんでそれをかわし、ナイフで喉元への突き上げを試みる。が、剣精はすでに僕が狙った位置にいない。僕の横に回り込んでいた剣精は、いくらでも攻撃できるはずだが、あえて僕の体勢の回復を待っている。手首を返しながら横跳びで懐に潜り、体重を乗せて胴にナイフを突き刺そうとするが、剣精はナイフを持っているほうの手首をつかんで引き、僕のバランスを崩して機を殺す。


一つ一つの攻防をギリギリこなせても、気が付くと不利な体勢になって追い詰められている。父親とよくやっていた、チェスの詰めまでの手順をなぞっているようだ。

シャツを持ち上げて汗をぬぐうと、そのままシャツを脱ぎ捨てて裸足になる。火照った体に石の床がひんやりと気持ちいい。


「時間が近づいてきたな」

「・・・はい」


淡々と時を告げる剣精は、剣を担いだまま、じっと僕を見ている。僕の意思が折れていないように、剣精の興味もまだ続いているようだ。

肺の底まで息を吐いて、気持ちを落ち着かせる。審査に落ちるのは仕方なくても、何もせずに終わるわけにはいかない。時は終わりに近づいている。

ここの段階までは、僕の狙い通りだ。


僕は、もう一度マナを練り直し、次の行動の準備にかかる。剣精は僕のたくらみをすべて見抜いていて、次の手もたやすく防がれるのでは・・・そんな考えが、頭をよぎる。だが、恐ろしいのは失敗ではなく、萎縮だ。いつの間にか、全てを出し切るのが、僕の目標になっていた。


ナイフを持ったまま、剣精に駆け寄り距離を詰める。剣精は、木剣を構え、迎え撃つ構えをとる。

後、二歩で衝突する・・・そんな距離になり、剣精は上段から剣を振り下ろす。


僕は、上半身を後ろにそらしながら、スライディングのような姿勢で膝を曲げて剣の軌跡からはずれる。


「何・・・!」


剣精の目が見開く。

軸足とは逆の足で握ったナイフを地面すれすれに走らせると、剣精の足元から顔までを引っ搔くような軌跡で、ナイフが弧を描く。

大黒猿を倒した技。これが、僕のアーツだ。


これ以上ない、会心のタイミングだった。

【名称】?

【発案者】レイル

【分類】技

【マナ使用部位】剣を握る方の足の先、逆の足、背中、腰(体幹)

【難易度】低い

【使用条件】条件あり(裸足)

【解説】

1 足の先で武具を握る(警戒されるため発動の直前が望ましい)

2 攻撃を行う(下からの攻撃が、特に死角になりやすい)


レイルは剣精相手に使用するために、同型のナイフを用意したが、足元に武器があればそれを使える、応用力の高いアーツ。

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