表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第二章 傷が癒えるまで
22/200

剣精とアーツ審査 -1

「中央の広場からまっすぐ北に向かった方の丘に、さびれた神殿がある。そこにいる見張りに名前を聞かれるだろうから、それに答えて案内されるまま先へ進むといい」


山から帰った翌日。コボル警備長が、明後日のアーツ審査についての説明をしてくれている。


「必要な持ち物などはありますか」

「自分で武器を持って行ってもいいし、神殿内の武器を好きに使っても大丈夫だ。一通りは揃っているはずだ」


神殿というわりに、なんだか物騒な場所だ。


「皆さんは、試練を受けたんですか」

「ここにいるララベルとジャヴ、俺は受けているな。皆落ちたよ」

「だから、無理に受かろうなんて思わないで。緊張しないでいいのよ」

「一発合格なんてされると、俺様の肩パッドが狭くなるからな」


ジャヴさんが、棘のついた肩パッドを摩る。肩身が狭いということだろうか。


「皆さんは、自分の武器を持っていきましたか?」

「そうだな。俺はロングソード、ララベルは槍、ジャヴは戦斧だったな」

「あれ、ジャヴさんは武器を変えたんですか」


今ジャヴさんが使っている武器は、スローイングができる手斧だ。戦斧に比べると、一回り小さい。


「お、おう・・・まあな」


歯切れの悪い返事が返ってくる。


「コイツ、剣精様にけちょんけちょんのメッタメタにされて、説教まで受けて武器を変えたのよ」

「へぇ・・・あれ、でも剣精って人間に危害を与えられないんじゃ・・・?」

「手も足も出なかったんだよ! 一時間、片手一本であしらわれたの! メンタルな危害だよ、あれは!」

「それで、コイツなんて言われたと思う? 『お前は・・・』」

「あーあーあーあ! うるせー! 少年の憧れを奪うな!」

「いや、別に、憧れては・・・」

「えっ 嘘っ!?」

「なんで、レイル君があんたに憧れて当然みたいな考えになってるのよ・・・」

「よし、その辺にしておけ」


コボル警備長が雑談を区切ると、場は集中を取り戻す。


「このアーツ審査が終わったら、SSLとしての仕事が本格的に始まる。任務では最初は危険なことはさせないつもりだが・・・慣れないうちは色々大変だろうから、試練は怪我のないように終わらせればいい」

「・・・はい」

「おい、任務が始まったら、やっと腕章をつけられるな」


僕は、手に持った赤い腕章を握りながら、頷く。街の役所に身分証として見せたことはあったが、まだ実際の任務で腕章をつけたことがない。

皆は、僕がアーツ審査を受けるのはジャヴさんの妄言がカール少佐に信じられてしまったためで、仕方なく審査を受けると思っているはずだ。

僕は、自分が本気で審査を受け、技を見てもらおうとしていることは、まだ皆に言っていなかった。

僕が審査に受からなければ、コボル隊に何らかのペナルティが付く可能性が高い。皆もそれを頭に入れているだろうが、話題には上がらない。僕に気を使わせまいとしているのだろう。


「今日はこれで終了だ。明日は一応、アーツの練習日ということになっている。明後日は我々は一緒に行けないが、大丈夫だな」

「はい」

「繰り返すが、明日、明後日は怪我をしないようにな。本当の仕事は、三日後から始まるんだ」


ここの人たちは、僕をよく考えてくれている。

だからこそ・・・恩を返したい。僕は、誰にも見られないように、腕章を強く握る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ