表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
何もかもが変わった日
200/200

化け物退治 その3

最初に口を開いたのは、ウさんだった。

志位さん達の中で一番腕が立つというウさんは、口数が多い方ではない。特に興味のある話題ではなければ、普段はチームの中では静かにしていることがほとんどだ。物静かというよりは、興味がないというのが正しい表現なのだろう。ジュリアさんと似たような、むらっ気のある天才肌の人物で、強敵と戦えれば、どんな作戦でもあまり文句はないらしい。

そのウさんが、突然僕達を追い抜いて行進を制した。


「待て。嫌な予感がする」


その一言で、志位さんとサさんの表情に緊張が走った。二人とも、それほどウさんのことを信頼しているのだろう。


「何か、いるのか」

「……かもしれん。断言は出来ないが……何か、嫌な予感がする」

「うむ……お前の勘は当たるからな。レイル、お前たちも気をつけろ」


志位さんが言う。


「は、はい」


僕は辺りを見回したが、おかしな所はない気がする。山の中に吹く冷たい風と、それを受けて震える木々。押し黙った僕達の周りに、余計な音は殆どなかった。山育ちの僕が感じられない環境の機微を、ウさんはどのように拾ったというのだろうか。


「……」


一同が、緊張の面持ちで円陣を作る。志位さんたちと打ち合わせたわけではないが、ここにいる皆は武術の経験者だ。自然と隙のない形になる。


「なぁ、本当に……」

「待て!」

「!?」


ジャヴさんが口を開いた瞬間を、ウさんは制した。

その理由は、僕にも分かった。あるタイミングを境に、急にじっとりとした視線を体に感じるようになったのだ。


「これは……」

「我々が気づいたことを、気づかれたんだな。向こうも隠す気はなくなったようだ」

「しかし……」


眼球からは常に、わずかなマナが飛んでいて、人はそれを視線として感じることができると、剣精から聞いたことがある。だが、少なくともこの辺りに大きな生き物の気配はないように思われる。

視線の話が本当なら、この化け物というのは相当な距離から我々を見ていて、とてつもないマナの持ち主という可能性がある。


「随分と、嫌な気を発するな」

「あぁ。人間なら、確実に人殺しのものだ」

「性格悪いやつだな。僕にもわかるぞ」


志位さんたちが、姿勢を崩さずに会話をする。志位さん達は、僕たちよりも気配に鋭いのだろうか。得ている情報量は、単なる視線以上のものを受けているようだ。


「ウさん、視線の方向は、わかりますか」


ララベルさんが、尋ねる。


「いや……常に移動しているな。野生の勘というやつか、用心深いことだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ