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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
何もかもが変わった日
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何もかもが変わった日 その8

「これを認識できる人間は、少なかった。なにせ、10年単位で測らなければ見過ごすような、ごくわずかな変化じゃ。人の尺度では、なかなかにとらえられん。わしは、物が軽くなっていたという事実を、あえて公表はしなかった。もっとも、聡明な人の中には、気づいたものもいたようじゃが……」


弓精はサさんを見る。サさんは、目を伏せて返答を控えめに拒否した。


「さて、わしは物の重さが変わったことに気づいたが、それが何を意味しているかはわからん。恐らく、何もかもが変わった日に関係するとは思うのじゃが……全ての物が一斉に変化しておるから、人々も気付きにくいようじゃ。お前さんたちの背が馬鹿でかくなったり、ピョンピョンと高いところまで飛べるようになったのも、重さが変わったせいじゃと思っている。もっとも、跳躍の距離に関してはマナのおかげで身体能力が局所的に上がったというのもあるがのう」

「身長まで……」

「じいさんが特別に低いわけじゃなかったんだな」


身長220cmのジャヴさんが、160cmの弓精を見て言う。

弓精は、ムッとしてこたえた。


「わしは当時の平均くらいじゃ。人種の違いや、食べ物がよくなったのもあるとは思うが、人は何もかもが変わった日以来、文字通り大きく変わった。環境に対応しているといえるのかもしれんが、わしはその変化のスピードが恐ろしくもある。時の流れに取り残された精霊じゃから、なおさらそう思うのかもしれん」


そこで言葉を区切ると、弓精は天を見上げた。言葉を探しているようにも、感慨にふけっているようにも見えた。


「さて、今度こそ全て話したぞ。お前さんが満足したかはわからんが、わしは少々話し疲れた。弓の手入れもしなければならん。そろそろ……」

「そうですね。長居をしました」

「貴重なお話をありがとうございます。何もかもが変わった日の究明に、きっと役に立つと思います」


皆が立ち上がって、身支度を始める。


「? なんだ?」

「にぶいな、帰れってことよ」


ジュリアさんが、ジャヴさんに小声で話す。


「ああ、そうじゃ。一つ、頼まれて欲しいことがあるんじゃが」

「ええ、もちろん。私たちでよければ……若?」


サさんは、志位さんを見る。志位さんも、それに応えてうなずく。


「私たちも、かまいません。今後、うちの国の者がお世話になりに来ると思いますし……」


ララベルさんも同様にうなずいた。


「うむ。すまんの。わしで解決できればいいのじゃが、何分そうもいかん事情があっての。なに、ちょっとした、化け物退治じゃ」


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