何もかもが変わった日 その6
「さて、どこまで話したか……」
「解呪士に会いに行き、白い大人と遭遇したところです」
サさんが、すかさずフォローを入れる。
「おお、そうじゃった。わしは、宿の解呪士達に会いに行った。宿とはいっても、主人は亡くなって、遺された子供が見よう見まねでやっているところじゃったが、その子は料理ができる子供と一緒に炊き出しのようなこともやっていたのじゃ。
それぞれの家の食糧が持ち寄られて、持ちつ持たれつやっていたところに、解呪士がきて食べ物を片っ端から解呪していった。温かく安心できる食べ物を手に入れて、街はようやく活気が出てきたというの。
さて、夜遅くにもかかわらず、解呪士達は部屋の戸を開けてくれた。向こうにとっても、弓精という存在は驚きだったようじゃな。
大人同士……といっても、わしは人間ではないが、色々な話をした。彼等も、呪いが爆発的に増えた原因はわからないという。元々、解呪は地元の湿地帯から湧き出る身体に悪いマナを消すために代々使われていたもので、それが今回の呪いにたまたま効いたのだという。本来は施術の対象も違う物だったのじゃ」
「へぇ……」
「知らなかったね」
皆が驚きの声をあげる。自分の国の先祖のことだったが、実際に見てきた人の言葉は重みが違う。
「ごくたまに、おぬしらの国に遠縁がいるという子などは、解呪をできるようになったりもした。わしにはついにできなかったが、マナの使い方にコツがいるのかのう……今でも、口惜しいわい」
弓精は、うつむいて唇を噛んだ。
多くの命を目の前で落としてきたのだろう。顔の皴に、深い影が入る。
「解呪士達は、五人のパーティじゃった。今後の国の……いや、世界の話をして、パーティを分散して色々な地に別れた方が、多くの人を救えるのではということになった。
そこで、わしは彼等の旅にボディガードとして同行することにした。弟子は皆死んでしまった後じゃったし、わしが面倒を見ている子供達は、ここに残るという彼等の一人に任せることとした。実際、弓しか使えんぼんくらの精霊よりも、その日食べるものを確保できる解呪士の方が子供達の生存率が上がるじゃろうしな。
何よりも、わしには世界を見て回らなければという義務感のようなものが芽生えていた。
弓の精霊として、毎日弦だけを弾いていればよかったころとは、流石に考え方も変わったわい」