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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
何もかもが変わった日
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何もかもが変わった日 その3

「その黒い霧は、帝国の方から流れてきたという。野生動物や植物も次々と死に始めたとき、人々はようやくどこかへ逃げようとしはじめた。何かを食べれば生き残れる。何の神に祈れば助かる。色々なデマと混乱に惑わされながら、逃げ惑っていた。そのころには、冷静に民を指導する人間は殆どが死んでいたのじゃから、無理もないかもしれんのう。

わしの道場には比較的若い者が多かったが、それでも何人かの者は年齢の高い順に死んでいった。急いで国に帰る者、弱った人の世話をする者、それぞれが必死になって抵抗したが、屈強な体をした戦士たちが、次々と倒れていく……何百年生きようと、縁の深い者の死は慣れるものではないの。その時くらいから、黒い靄は呪いと呼ばれるようになった」


「弓精は、その時からじじいだったんだろ?呪いは大丈夫だったのか」

「……わしは、姿は人間の老人じゃが、精霊格じゃ。弟子達も心配しておったが、影響はなかった」


ジャヴさんのじじいという言葉が気に食わなかったのか、弓精はギロリと睨んでから言った。


「およそ一年ほど経った頃、わしの道場も含めて、大人はほぼ全滅した。青年は半分くらい、子供達はそれより少し多い程度に生き残った。

当然じゃが、国政をはじめとして、世界中は大混乱になった。親の仕事を見よう見まねで始める者もいれば、悲観して命を絶つ者も大勢おった。両親や兄弟を失った後の子どもたちの苦労は、途方も無い物があったのじゃろう。呪いで死ななくても、飢えや混乱で命を落とす子どもたちは少なくなかった。

そんなこともあって、わしは街に降りて子供達の生活の指導をすることにした。武の精霊の本分を越えていたかもしれんが、彼らが、無事に大人になるまでという条件付きでな。

生き残った者達を集めてみると、彼らが不思議な輝きを持っているのがわかった。人々は、今で言うところの、マナを使いはじめていたのじゃ。それまで、ごく一部の才気あふれる者にしか見たことのない輝きが、皆の身体に広がっておった。どうやら、呪いが半ば強制的にマナを引き出したようじゃった。

……大人達は、マナを使えなかったのか、使えるようになるまでに生き絶えてしまったのか、今となってはわからんが、生まれて初めてマナを使い始めた子供達は、疲れやすく、力のさじ加減もままならないようじゃったが、すぐに慣れていったようじゃった。

そんな時、解呪士が派遣されるという噂が街中に流れた。色々なデマが流れる時勢じゃったが、実際に見てきた者も多く、信頼に足る情報と見たわしは、使いのものをやって様子を伺うことにした」


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