異国/アーツ審査 その12☆
浮き刀。いつの時代にできたアーツなのか、詳しいことはわからない。SSLの人間にも、知っている者とそうでない者に別れていた。
だが、剣聖は知っていた。剣の武人としては当然なのかもしれないが、明らかに何度か目撃したような態度だった。
これは仮設だが、おそらく、精霊同士である程度のアーツの共有ができているのではないか。そして、その説を通すのであれば、弓精も浮き刀を知っている可能性が高い。
もともと、この歩法はレベルの高い相手には通用しない。それは、わかっている。だが……僕の目的は、体勢を崩した後の一撃だ。
弓精は、脱力して構えたまま僕を待つ。僕への警戒を強めたのか、先程よりも眼光鋭く、集中しているのが見て取れる。
僕は突き出したナイフを少しずつ体に引きながら、距離を縮める。
「シッ!」
一気に歩を詰めると、ナイフを弓精の喉元めがけて突き出した。当たるとは、思っていない。今、この瞬間の本命は、足元のナイフを足の指で拾うことだ。
案の定、弓精は僕の攻撃を木の棒で払った。悟られないようにすり足でナイフを掴むと、そのまま股間を目指して突き上げる。
だが、
「カカカ、やはり、下かっ」
「……!?」
功を焦りすぎたのか、歩法に不自然なところがあったのか、弓精は僕のナイフを、紙一重のところでバックステップでかわした。剣聖に通用したパターンが、弓精に通じないとは、想定外だった。
(どうする……考えろ、考えろ……)
空振りの格好で、コンマ数秒。僕は必死に考えを巡らせた。
一瞬の後、僕はナイフを掴んでいない逆の足にマナを集中させた。
軸足ではあるが、片足での移動。それは、マナがあるから、できる技。
僕は、片足で地面を蹴ると、そのまま前転宙返りをして体を前方へ飛ばした。
「うおおっ」
先程バックステップをした弓精の両足が地面に着いた、その刹那。僕が足の指で握ったナイフが、頭上から襲いかかった。
足を伸ばして回転する剣戟は、普段の僕の攻撃のリーチを大幅に伸ばすものだった。
「!」
とっさに頭上をかばう弓精の腕を、僕のナイフが引き裂いた。
「ぐっ……」
苦痛は少ないと言っていた弓精から、苦悶の声が漏れる。
僕は片足で着地をすると、体勢が崩れたところを狙われないように、弓精目がけて持っているナイフを投げ、距離を取る。
見上げると、出血をした腕を抱える弓精がいた。投げたナイフは、なんとかかわしたようだった。
【名称】未定
【発案者】レイル
【分類】技
【マナ使用部位】足
【難易度】やや難しい
【使用条件】裸足
【解説】足の指にマナを使い、ナイフを掴んで繰り出す技の集合。死角となりやすい足元からの攻撃や、ナイフを使う時にリーチを補うことができるのがメリット。相手の意識が上半身に集中しているときに使うと効果的。
ボディバランスとマナの制御が肝要で、特に足腰はマナだけでなく、素の筋力を鍛えないとうまく使いこなせない。難点は、裸足にならないと使えないこと。