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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
異国/アーツ審査
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異国/アーツ審査 その11

「むうっ」


一投目は木の棒で弾いて対応した弓精だったが、二投目で体勢を崩し、三投目のナイフを手で受けることとなった。

手の甲を僕のナイフが貫くと、鮮血が飛び散る。

僕は思わず追撃の手を止め、立ち止まった。


「……大丈夫ですか」


振り返ってみれば、僕の攻撃が精霊に当たったのは初めてのことだった。剣聖との訓練中の攻撃は、は全てかわされていたし、今回使ったアーツも、剣精にはかわされるというイメージをぬぐい切れていなかった。

そんな状況で血を出す弓精の姿は、少なからずショックなものだった。


「なに、心配はいらん」


弓精は、そういうと手に刺さったナイフを引き抜いた。

手のひらから吹き出た血が、みるみるうちに止まっていく。治療にマナを使ったとしても、異様なスピードだ。


「ふむ。ナイフに毒は塗ってないようじゃな」


数回手のひらを振ると、すでに血が止まっていただけでなく、傷口も塞がっていた。白髭についた血がなければ、痕跡らしきものはまるで残っていない。


「ああ、驚いたか。まぁ、無理もないの。精霊は見ての通り、傷をつけるのが難しい。痛みもあまり感じないのじゃ」


平然と話す弓精を、僕は唖然として見つめる。剣精に傷をつけたことがなかったので、こんなことは考えたことがなかった。


「血が出るのも、人間であったときの癖のようなものじゃ。」

「……それを聞いて、安心しました」


僕は、ベルトから別のナイフを取り出した。


「む? まだやるのか」


今度は、弓精が驚く番だった。


「ええ。まだ、全部を見せていないので。そちらが大丈夫でしたら、やります」


暫くの間、僕と弓精の視線が絡む。


「……せっかく遠いところから来たんじゃ。いい機会じゃからの。やれるだけやっててみるといい」

「ありがとうございます」


相手を殺してしまう心配なく、技を試して剣を振るえる。こんなチャンスは、めったにない。特訓のつもりで、最大限利用する気だった。

僕は、手に持ったナイフを突き出す。


(剣聖……)


剣聖にアーツを審査してもらったときも、この構えから始まったのを覚えている。

あの時と、色々と状況はかわってしまったが、僕は同じ構えで同じものを目指している。わずかにこみ上げるものを胸に、僕はすり足で距離を詰める。



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