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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
異国/アーツ審査
182/200

異国/アーツ審査 その8


「ララベル、体重いくつさ」

「えっ、急に、なによ」

「いや、軽い順に滑るとかいって、自分のところでロープが切れたら嫌だなって」

「……た、確かに、それは嫌……」

「うちらは、コインで決めようか」

「そ、そうね、そうしましょう」


一方その頃、志位さんたちも集まって打ち合わせをしていた。


「若、落ちたら死にますからね。ここはふざけないでくださいよ。今日一番真面目にならなきゃいけないところですよ」

「わかってるよう」

「頭ではわかってるのに、何かやらかすから怖いんだ」

「よし、今から頭巾を作りますので、それをつけましょう」

「そんなの要らないってば!」


順番は、僕、志位さん、ララベルさん、ジュリアさん、サさん、ウさん、ジャヴさんとなった。間に、各々の荷物だけを結んで降ろす回があるので、随分と往復することになる。


「では、行きます」


先頭の僕が滑り始める。

ロープにぶら下がると、滑車はゆっくりと滑り始めた。地上数十メートルの谷底を越え、逆側に着くと、後ろから皆の歓声が聞こえてきた。

踵を擦って着地し、ロープから降りる。振り返って、問題がないと示すために手を振る。

滑車に新しいロープを結び、適当な枝を結んで投げる。それをジャヴさんが受取り、今度は僕の荷物が降ろされてきたので、受け取る。

そんな調子で、全員とその荷物が無事に渡ることができた。最後にジャヴさんが体を水平にして滑ってきたが、ララベルさんを見ると首を振ったので、誰も触れないでいた。


滑車の後は何か仕掛けがあったわけではなく、細い道や険しい道はあったものの、迷わず進むことができた。途中の細い崖っぷちの道などは、マックスさんには渡るのが厳しかったかもしれない。

中腹あたりで平坦な道が続き、やがて小さな小屋が見えた。僕の国ではあまり見ないスタイルの、瓦を使ったオリエンタルな建築物だった。裏には、小さな畑と井戸がある。ここで暮らしているのだろうか。


「やはり……」


ウさんとサさんが感慨深く頷いているところを見ると、考えていた通りの人物だったのだろうか。


「ここが、弓精の家ってことか?」

「おそらく」


皆が静まり返って気配を探るが、目の前の家からは物音一つしない。


「留守……かな」

「おるわい」

「うわっ!?」


突然、背後から声がしたと思ったら、すぐ後ろに小柄な男性が立っていた。


「いつの間に……」

「あ、あなたが弓精ですか」

「いかにも。まったく、せっかくの仕掛けを、強引な方法で渡ってきおってからに」


そう言って、弓精は僕達をじろりと見回すと、長いあごひげをなでた。深い皺と鋭い眼差しは、確かに只者ならぬ気配を感じる。剣精とは、外見は全くかけ離れているのだが、どことなく佇まいに似たものを感じる。達人に通じる何かがあるのかもしれない。


「お主たちは……弓使いではないな。全く、嘆かわしい限りじゃ」


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