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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
異国/アーツ審査
180/200

異国/アーツ審査 その6

少し考えた後、僕は妙案を思いついた。


「ジャヴさん、ほら、あの技ならどうです?」

「ん?」

「ほら、以前に二人で戦った時に使った、くるくる回るやつ」

「?」

「その……フライング、なんとかですよ。上からゆっくり落とすように使った技です」

「なんとかじゃ、わからんな」

「フ、フライング……デス・ソーサー……」

「ああ! あれな! 最初から言えよ!」


ジャヴさんは、ぽんと膝を叩いた。


「その恥ずかしい名前を言わせたかっただけでしょ」


ララベルさんが、呆れたように言う。


「で、フライング・デス・ソーサーでどうやるんだ?」

「手斧にロープをつけて、回転させながら、あの輪に近づければ、上手いこと滑車をぶら下げているところに絡まるんじゃ無いかなと」

「ほう。手斧にロープを、か……。よっしゃ、やってみるか」


出番が出てきて嬉しかったのか、ジャヴさんはいそいそと準備を始める。


「ジャヴ殿は、投擲に自信があるので?」


ジャヴさんがロープを結びつけている間、サさんが、話しかけてきた。


「ええ、見た目によらず、繊細なコントロールなんですよ」

「ほう。拝見しましょう」


僕、ララベルさん、ジュリアさんは、ジャヴさんの投擲の腕を知っているが、志位さん達とマックスさんは、やや不安げに見守っている。


「よし、いくぜ」

「ちょっと、滑車をぶら下げているロープを切らないようにね」

「まかせとき!」


指に唾をつけて、風向きを確認すると、ジャヴさんは大きく振りかぶる。構えの大きさを見て、皆が一歩下がった。


「ヒャアッハアア!」


例の奇声とともに、斧が高速回転をして上昇していく。刺客と戦った時には、上昇するところを見ていなかったが、掛け声とは裏腹に、静かに登っていく。


「むう」

「おお、すごいですね」


志位さんたちが驚いたのも無理はなく、手斧は真っ直ぐに滑車の方へと向かっていった。相変わらず、精妙な斧さばきだ。

凪の中、静かに上がっていった手斧の柄の部分が、滑車をぶら下げる紐に絡みつく。


「おお!」

「やった!」


歓声が上がる中、ジャヴさん、強めに斧を引いて確かめる。どうやら、一発で成功したようだ。


「では、僕が上に登って、輪に紐を通してきます」


そう言って、僕は荷物を降ろした。


「え!」

「危ないよ、レイル君!」


皆が口々に言う。


「ジャヴにやらせておけばいいのよ、そういうのは」

「おい……」

「大丈夫です。僕が一番体重が軽いでしょう」


僕は、手斧に結びついているロープを思い切り引いた。しっかりと絡まっているようだ。


「よっと」


靴を脱いだ後、手にマナを集めて、ロープに捕まる。足の指でロープを挟むと、大黒猿と戦ったことを思い出してしまう。


「……くそっ」


頭を振って、雑念を追い出す。ロープを登り始めると、すぐに滑車のところまでたどり着いた。まずは滑車をぶら下げているロープに捕まってから、滑車を持ち上げて輪の中にロープを通す。その後、ロープを下の皆へと投げた。

これで、皆が滑車を使えるようになるはずだ。

僕は、一息ついてこれから渡る崖の向こう側を眺める。僕達が来た道よりも岩場が多くなっている。高度が上がっている証拠だろう。


「おーい、うまく行ったんなら、降りてこい」


ジャヴさんが、下から声をかけてくる。

その時、山の方から視線を感じた。振り返ると、人影のようなものがとっさに木の陰に隠れた気がした。

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