異国/アーツ審査 その4
村の小さな宿に一泊の後、僕たちは早朝に移動を開始した。
多めの食料と、防寒具、厚手の靴に履き替えて、準備を整える。
山道になりそうなので、少しのお金を宿に払い、余計な荷物と馬はおいていく。
「頼むぜ、山育ち」
ジャヴさんが、僕の方を叩く。自分が役立てそうな場面が来たので、意気込んで頷く。
「では、行きましょう」
ララベルさんを先頭にして、昨日確認した看板通りに行軍を始める。森林を分け入った道を進み、徐々に登っていく。
昨日の村人の台詞もあったので、警戒をしながら進んだが、特段に変わった所のない山道だ。
中腹辺りまできたときのことだ。
「待って下さい。足音がします」
僕は、先頭を歩くララベルさんを止める。その言葉通り、しばらくすると前方から三人の団体が歩いて来た。男3人の、経験豊かそうな面々だ。
「……」
お互いに、無言のまま立ち止まる。どうしても、武器を持っているので警戒せざるを得ない。
やがて、先頭の髭面の男が口を開いて何かを話した。
「お、おい、なんて言ったんだ?」
ジャヴさんが僕に聞くが、まったくわからなかった。僕にとって、これが生まれて初めて聞く外国語だった。
「ここの国の人間なのかって、聞いてるよ」
ジュリアさんが、ララベルさんに言った。
「わかるのか!流石、自由人」
「ふっふっふ。お任せあれー」
前に出たジュリアさんが、何度か言葉を交わす。何を話しているかはわからなかったが、意思の疎通はとれているようだった。僕たちは、それを見守るしかなかった。
「外国語を話せるなんて、すごいなぁ、ジュリアさん」
「オホン、オホンオホン」
わざとらしい咳払いが聞こえてきた。見ると、志位さんが目をキラキラさせてこちらを見ている。
「?」
「私だって、二ヶ国語を喋っているぞ、と、言っています」
サさんが、しょうがないという顔で解説をしてくれた。
「そうか、考えてみたら志位さんも外国語を話しているんですね。すごいなあ」
「うひひ、そうだろう、そうだろう。心ゆくまで、褒め称えていいぞ」
首の後を掻きながら、こそばゆいといった顔で喜ぶ。
その間に、ジュリアさんは話をまとめていた。
「この先は進めない。別のルートを進むべきだって、言ってるよ」
「進めない……? どういうこと? このルートは看板通りのはずよ」
「うーん……聞いてみる」
もう一度、ジュリアさんはパーティに向かい合って尋ねる。
「言ってみればわかるってさ。色仕掛けで聞いてみたけど、詳しいこと教えてくれなかった」
「ちょっと! 話がややこしくなるようなことしないでよ」
「冗談よ。あんまりタイプじゃないし……とりあえず、情報はあまり引き出せそうにないね」