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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
異国/アーツ審査
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異国/アーツ審査 その3

「千年かぁ……」


皆、そのインパクトが抜け切らないようだ。


「とりあえず、会ってみるしかないでしょう。幸いにも、実在はするようですし、その辺りは会ってみれば確認できます」

「若、後でお勉強コースですからね」

「そんな……どうして……」

「どうしてじゃないだろ」


ウさんが、冷静に言い放つ。


それから二日移動をして、麓の村に着いた。

僕たちは、一旦バラバラに分かれて聞き込みを始める。一人で歩いていると、すぐに畑仕事をしている男に出会った。初老の、よく日に焼けた男性だった。


「こんにちは」


男は、立ち止まると僕をじろじろと見回した。


「……あんたらも、弓精のところかい?」

「はい。弓精が、どこにいらっしゃるか、ご存知ですか」

「ご存知もなにも、この村の裏に看板が出ているよ。そこを行けば、まっすぐだ」


男は、鍬で山の方を指した。ここからは見えなかったが、山へ続く道の方に看板があるというのは、下調べと一致する。


「ありがとうございます。もう一つだけ、聞かせて下さい。弓精のところに行くには、登山の装備は、必要そうですか?」

「うん? 登山? そんなのしている人は、見た事ないな。大丈夫じゃないか?」


顎の下をぽりぽりと掻く。よそ者の僕にあまり警戒をしないところを見ると、僕のような外部の人間に慣れているのだろう。


「よく見ると、北の国の人なんだな、珍しい。あんたたちの国には、剣のべっぴんさんがいるんじゃないのか?」

「ええ、そうなんですが、ちょっと任務で弓精のところにくることになりまして」

「ふーん……」


剣精の消息を見失っていることは、なるべく伏せなくてはならない。上手くごまかせただろうか。

初老の男は、僕の方をもう一度じろじろと眺めた。


「あんたは若いから忠告しておくと、弓精のところには登山の装備はいらないが、あそこまでたどり着ける人間は少ないよ」

「……!? どういう意味ですか?」

「なに、行けばわかるさ。怪我のないようにな」


そう言うと、初老の男は手を振って去っていった。

僕は、弓精がいると思われる山を一瞥する。特段に険しい山には見えない。開発されたルートを辿れば、問題ないように思えるのだが……。

皆と合流すると、集めた情報は概ね一致していた。弓精のところにはなかなかたどり着くのが難しいこと、そして、弓精にはめったに会えないこと。

口裏を合わせている様子もなく、ほぼ確実な情報だと思われた。


「弓精を隠されている気配はないけれど……なんていうか、存在を積極的に利用する様子もないわね」


ララベルさんが、腕組みをして考察する。


「剣精は、手続きをすれば誰にでも会っていたのに比べれば、放置されているような感じですね」

「なにせ、千年物だからな。暮らしの一部になっているのかもしれないな」

「こら、精霊を古いお酒みたいな言い方するな」

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