異国/アーツ審査 その1
「まずは、道なりにすぐ行ったところに街があるので、今日はそこまでを目指しましょう」
志位さんたちと合流した後、ララベルさんが指示を出す。
「移動距離は短いけど、盗賊のこともあったから今日は早めに宿をとりましょう」
その言葉に、皆ほっとする。口にはしないが、全員疲れが溜まっているようだ。
爆睡している志位さんは、ウさんの馬に乗せられている。関所も、寝て通ったようだ。
「気を使わせて、すまんな」
「いえ、気にしないで」
ウさんがお礼を言うのを、ララベルさんが手を振って応える。
「ところで、この一行の行き先だが……弓精のところということで、いいのかな」
「……ご存知だったのでは?」
ララベルさんは、明言を避けた。
「いや、うちのボスから聞いたのは、そこのレイルという少年が旅にでるので、それに着いていくということだけだ」
「それでは、弓精というのは、どこからきたのですか?」
「うちの参謀殿が、色々と推測をしてな。方角、剣精がいなくなった時期などから、可能性が高いんだとよ」
そう言って、ウさんはサさんを指す。
「なるほど……」
出国前のあの時、志位さんはサさんに聞けばわかりそうと言っていたが、見事に当てられてしまっている。
「そこのレイル君が、審査に挑むのではとも話していたよ」
「……」
国の人間としては、アーツ・ホルダーの動向が海外に渡っている時点で、苦々しい状況なことに間違いない。志位さんたちが、情報をどう使うのかはわからないが、同様の情報が諸外国に漏れていると考えると、ララベルさんが苦々しい顔をするのも無理はない。
「ノーコメントとさせてください」
「ああ。我々は、外国の人間ではあるが、諜報ではない。固く考えずに気楽にしてくれ」
「……」
昼を少し回った頃、僕達一行は最初の国についた。飾ってある国旗が違う以外は、町並みも同じような感じだ。
「あれが宿ね。あなたたちは、どうします?」
「別の宿にするかな。なるべく、出費を抑えていきたい」
ウさんがそう言うと、ララベルさんはうなずいた。
「では、明朝に広場で会いましょう」
「わかった」
「その子、ちゃんと起こしてきてね」
「……こいつは、徹夜は苦手なようだ」
気持ちよさそうに寝ている志位さんを見て、頭を掻きながら、ウさんはつぶやく。
宿についた僕たちは、軽いミーティングを行った後、装備を整えるために自由行動となった。
「各自、迷子にならないようにね。今日は大変だったことだし、早めに休むこと」
「うし、レイル、怪しい土産物屋行こうぜ」
「僕はナイフを見たいんですけど……」
「大丈夫だって。怪しい土産屋には、たいていちゃちなナイフがあるもんだ」
「いや、だから、ちゃんと使えるナイフを見たいんですけど」
「いいからいいから!」
ジャヴさんは、強引に僕を担ぐ。
「お前らは、どうする?」
振り返って、他のメンバーに声をかける。
「私は、パス。まずはシャワー浴びるわ」
「私は、明るいうちに書類書いて、早めに寝る」
「あ、僕は同行します」
「じゃ、マックスさんよろしくね」
「なんで、今回初同行のマックスが俺たちの監督みたいになってるんだよ……」
「信用度よ」
結局、その日は無限の体力を持って土産物屋や路地裏の店に入っていくジャヴさんに連れられて、ろくに買い物をすることはできなかった。