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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十五章 旅立ち
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旅の記録 -16

国境での手続きは、思ったよりも時間がかかっていた。国の関係者なので、一般の越境者よりも手続きは早いはずなのだが、かれこれ一時間ほど経っている。

ララベルさんが代表として関所にかけあっているが、盗賊団を半壊させた報告が長引いているようだ。途中、兵士が慌ただしく関所から飛び出していったのを見ると、事実確認などがあるのだろう。

その間、僕たちは国境前の空き地に待機をしている。辺りには商人のキャラバンや、旅行者なども見受けられる。志位さん達は僕たちとは別の、一般の入り口から手続きをするようだが、疲れて爆睡している志位さんをウさんが担いでいる。遠目にも、涎が頬をさかのぼっているのが見える。


「街に着いたら、斧を補充したいな。盗賊どもに投げたやつのうち、一つだけ見つからなかったぜ」


ジャヴさんが悔しそうに手のひらを叩く。


「私はシャワーかなー。体を拭くだけじゃ、スッキリしないや」

「軟弱者め! シャワーくらい、一ヶ月入らなくても死なないだろう。なあ、レイル?」

「……ジャヴさんは、自分と僕が同じ考えだと思いがちですよね」

「えっ、それ、遠回しになにか言おうとしてるの!?」


驚いた顔のジャヴさんを放って、国境の向こうを眺める。青々とした平原が広がっている。当たり前だが、特に僕たちの国と変わりはない。

向こうの国から僕の国へと入ろうとしている人達の列が、長々とできている。


「レイル君は、外国は初めてかい?」


棍によりかかったジュリアさんが、黒い瞳で僕を見つめる。


「はい。ずっと、田舎暮らしだったので……自分が他の国に行くことがあるなんて、思っていませんでした」

「向こうの国も、言葉は通じるし、今は国と国の間は表立って揉めてもいないから、気楽にするといいよー」

「はい」

「向こうの国は、名物料理も多いんですよ」


マックスさんも、話に乗ってきた。


「マックスさんも、外国にはよく出るんですか」

「任務の中で、何回かです」


チラリとジャヴさんを見ると、ニヤリと笑った。あえて触れずに、馬の様子を見に行く。

全員の馬はゆったりと草を食んでいて、リラックスをしているようだ。旅の生命線なので、よく観察をしたが、問題はないように見える。この先があまり悪路でないことを祈る。


ようやく、ララベルさんが解放されたようだ。僕たちに向かって、頭の上で丸を描いている。

笑顔ではあったが、手続きが長引いたせいか、さすがに疲れた顔をしている。この旅が始まってからずっと、隊長として皆を引っ張っているのだ。気苦労も多いのだろう。……僕のせいも、あるかもしれないが。


「あっちの、東の国の旅人は顔見知りだけど……悪い人達じゃないから、よければ通してあげてね」


役所の人に一言添えた後、僕たちと合流する。一応、行動をともにしているという体はとらないでいるようだ。

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