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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十五章 旅立ち
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旅の記録 -14

僕たちが泊まっていた小屋に戻ると、小さな室内はこっぴどく荒らされていた。

おそらく、頭領と一緒に僕たちを追わずにこっそりと物色をした、抜け目のないものがいたのだろう。全員の荷物がひっくり返されて、金目のものがないか物色されたようだ。

馬が残っていたのは、不幸中の幸いだった。処分すると足が付きやすいので、頭領にバレるのを恐れたのだろう。


「やれやれ。ひどいものね」


ララベルさんは、ため息まじりに言う。


「うーん、この小屋自体が、罠だった可能性があるねー」


ジュリアさんが、腰に手を当てて辺りを見渡す。


「この小屋に人が泊まったら、盗賊が囲みに来ていたってことか。危なかったな」

「志位さん達には、感謝してもしきれないですね」


その志位さん達は、まだ外で金目のものを探している。国を出て資金が有限な彼らにとっては、ばかにならないお金なのだろう。

各自が、ため息交じりに散乱した自分の荷物を片付け始めた。


「うわあっ!」

「ど、どうしたんですか、ジャヴさん!」


悲痛な悲鳴を聞いた僕は、思わず反応してしまった。


「お、俺の予備のドクロが割れているっ!」

「予備のドクロってなんですか……」

「レイル君、変な単語が出ても、わざわざ聞かなくてもいいのよ」


ララベルさんが、自分の荷物を片付けながら僕を諭す。周りを見ると、わなわなと震えているジャヴさんを、誰も気にしていない。輪を乱すのも問題なので、僕も相手にしないようにする。


「おーい、このパンツはどっちのだ!」

「聞かなくていいから!女物があったら、こっちにまとめておいてよ!」

「上はわかるんだけどなー」

「あんた……首都に帰ったら、覚えてなさい!」


任務が終わるまでは、ジャヴさんの命を消さない辺りが、ララベルさんの責任感の現れだろう。


「さて、こんなものかな。みんな、金子は無くなっていない?」


一通り荷物がまとまったところで、ララベルさんが切り出した。


「大丈夫です。元々、そんなに多く持って来てなかったので、全部のお金を持ち歩いていました」

「わたしもー」

「僕もです」

「ララベルさん、隊費は大丈夫ですか?」


マックスさんが、心配そうに尋ねる。


「うん、いつも持ち歩いているから、大丈夫でした。特に今回は、交渉に使うかもしれなかったから、個人的なものも合わせて移動しました」


皆が胸をなでおろす。途中でリタイアということには、ならなさそうだ。


「あのー、ところで……志位さんたちは、どうしましょう」

「うーん……」


皆が、ララベルさんに注目する。判断に迷うところだろう。恐らく、みんなの意見も割れるはずだ。


「本来は、任務に他の国の人を加えるわけにはいかないんだけど……今回は、恩もあるし、ねぇ」

「……」

「あの子は、レイル君についていきたいと言っていたんだよね」

「そう言っていました」

「腕も立つし、トラブルにはならないんじゃないですか」


マックスさんが、挙手をして発言する。


「何かあれば、サさんが止めてくれるとは思いますけど……」

「うーん……」


ララベルさんは、しばらく腕組みを解かなかったが、やがて観念したように。


「たまたま方向が同じで、同行したということにしましょうか」


と、言った。

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