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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十五章 旅立ち
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旅の記録 -11

「お、あそこかなー」


ジュリアさんが指したところには、確かに道が狭まったところがある。左右は木と深い藪で囲まれていて、容易には脇から入ってこれそうにない。


「みんな、あの場所まで行って、陣を作って!」


ララベルさんが、全員に指示を出す。さすがに、苦しそうだ。ララベルさんの息が切れているのを、僕は初めて見た。

振り返ると、まだ盗賊達はまばらに追ってきている。だが、大半は様子を見ながら歩いていて、乗り気ではなさそうにも見える。先に進んだ仲間たちの死体が、道なりにゴロゴロと転がっているのだから無理もないだろう。

僕たちに追いついた男達も、距離をとって攻めあぐねているようだ。

マックスさんが肩で息をしている他は、概ねこちらに損害はなさそうだ。特にジャヴさんなどは呼吸が全く乱れていない。一時は完全に包囲されたことを考えれば、この状況は上出来だろう。

ゾロゾロと、次から次へと男達が集まっていく。森に入って回り込もうとするものはいない。

そこへ、蹄が地面を叩く音が聞こえてきた。


「あ、僕の馬!」


マックスさんが、声を上げる。頭領が、馬に乗って追いついてきたのだ。僕がナイフを投げた腕には、ボロ布を巻いて応急処置をしてある。


「お前ら!何をグズグズしてやがる!とっとといかねえか!」


馬上からだんびらを振り回して、いきり立つ。


「で、でも、あいつら凄腕ですぜ」

「傷一つついてねえよ!」


部下達が、抗議と哀願の混じった声を出す。


「あん!?今、俺に指示をしたか!?」


頭領の目が、ギラリと光る。


「してない!してないけど、あいつらは化けもんだ!」

「助っ人で来た、あのちび女達も全然近づけないしよう」

「誰がちび女だ!」


志位さんが聞き逃さずに抗議する。

男達の士気は、あからさまに低下している。僕たちにとっては、都合がいい


「このまま、諦めてくれねーかな」


マックスさんが、斧を構えてつぶやく。


「お互いに、それが一番なんだけど……」

「動かない奴らは、俺が叩っ斬るぞ!」


口から泡を飛ばし、頭領が叫ぶと、しぶしぶといった表情で盗賊達が前に出る。


「うーん、害悪」

「みんな、後一息よ。気を抜かないで!」


僕とジャヴさん、そして志位さんたちが息吹で呼吸を整える。


「敵は……後、何人くらいだ?」

「この後、どれだけ増えるかによるわね。どさくさに紛れて逃げたやつらも多そうだけど」

「途中離脱、大歓迎だぜ」


月明かりの下、僕たちは構えたまま相手の出方を待つ。


「逃げるなら、追いません。命が惜しかったら、とっとと武器を捨てて退散しなさい!」

「逃げたら、俺が殺す!」


盗賊達はジレンマを持ったまま、こちらににじりよる。若干ではあるが、頭領への恐怖が勝ったようだ。


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