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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十五章 旅立ち
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旅の記録 -9

「俺は金髪をいただくぜ」

「俺は黒髪の方だ。いきがよさそうで、うれしいね」


腕に自信があるのか、度胸が据わっているのか、出てきた盗賊達は落ち着き払っている。個々の実力では僕たちが勝っているかもしれないが、乱戦慣れしているのなら、それだけで脅威だ。


「よおし、せぇ……」


合図の為に頭領が腕を振り上げた瞬間、僕の投げナイフとジャヴさんの手斧が飛び出した。二人とも、考えていることは、同じだったようだ。


「ぬおっ」


咄嗟に手斧を剣で弾いたが、僕の投げナイフは腕に刺さった。一瞬の判断で傷が大きくなる斧を防いだのは、敵ながら見事と言うべきだろう。

弾かれた手斧は、そのまま後ろに飛んでいき、盗賊の一人の肩あたりに刺さって後ろへ倒した。


中途半端な合図だったが、いきり立っていた盗賊達は一斉に動き始めた。二歩、前に進んだ男の喉を、ララベルさんの槍が掻っ切る。その横では、ジュリアさんが別の男の眼底を砕いていた。


「くそ……」


両手に斧を構えたまま、ジャヴさんは汗を拭う。

誰しも時間の問題だ。そう思った時、


「ギャァ!」


僕の後方、やや離れたところから、僕たち以外の誰かの悲鳴が聞こえた。


「な、なんだ!?」


その声が意外だったは、僕たちだけではなかったようだ。盗賊たちも、声の方を一斉に確認しようとする。


「おーい、レイルー。生きてるかぁ」


緊迫した空気とは裏腹の、のんびりとした声。この声に、僕は聞き覚えがある。


「志位さん……!?」

「わはは。聞こえた! でも、全然見えないな。ちょっと待ってろ、今そっちにいくからな」

「まさか……本当におっかけてくるなんて」

「いやー、それがさ、聞いて「ぐあっ」よ。一回変な道に入「ううっ」っちゃって。この辺の「ぎ……あ……」人に道を聞いても、あんまり教えてくれないしさー」


世間話をしながら、ウさんサさんと連携して、ザクザクと人を切り刻んでいる。

志位さんに振りかぶった剣をウさんが弾き、手ぶらになった相手に志位さんがとどめをさす。次にウさんの背後から襲い掛かってきた相手に、サさんが横なぎの一閃を放ち、首を斬る。


「凄い……」


志位さんらが、僕たちよりも圧倒的に優れている点は、一目瞭然だった。どうやっているのかはわからないが、彼らは連携しての戦いが恐ろしく上手い。まるで一人の人間が6本の手を持って戦っているかのごとくに、三人がお互いを補いながら動いている。中心に志位さんを置き、脇の二人は志位さんの周りをつかず離れず戦っている。


僕たちには、あの連携がない。だからこそ、こうして円陣を組まざるを得なかったのだ。


「おい! レイル! 見とれてる場合じゃないぞ!」


ジャヴさんの声で、僕は我に返る。確かに、混乱に乗じて脱出をするなら、今しかない。


「ララベル! どうするんだ、合流するのか!」

「あの人たちの後ろに退路があるか、確認して!」


長身のジャヴさんが、背を伸ばす。


「大丈夫だ、明かりは見えない!」

「あんた、今度見間違えてたらモヒカンを馬に食わせるよ!」

「ひっ、だ、大丈夫です」

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