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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十五章 旅立ち
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旅の記録 -8

「まさか……分裂した……!?」

「数え間違えただけだ! アホ!」


そんなやりとりをしている間にも、前後から続々と盗賊たちが集まってくる。

先陣は膠着状態にあり、歩みはほとんど止まってしまった。

徐々にではあるが、包囲網が狭まってくる。


「男は殺す!女は、楽しんでから考える!」


首領らしき男が、ようやく顔を出した。熊の毛皮を身につけた、酒に焼けた顔をした浅黒の男だ。


「そこのやつら! 女を捕まえるのに協力したら、逃がしてやる。よく考えろ!」


がなり声が、辺りの葉を揺らす。息を止め、こちらに考える時間を与えているようだ。


「なぁ、お前らもこっち側だろ? 用心棒も、命あっての物種だぜ。意地を張らずに、協力しろよ」

「?」

「?」


男が指を指すと、ジャヴさんとマックスさんが、お互いのことを指差す。


「いやいや、お前ら両方に言ってるんだ。中々腕が立つみたいだな。俺は過去にはこだわらないぜ。反省して盗賊になるというのなら、仲間にしてやってもいいんだ」

「?」

「?」


お互いに顔を見合わせた後、モヒカンの男と傷顔の男は武器を挙げて抗議の声をあげる。


「ふざけんな! 俺は善良な市民を守るSSLだ!」

「そうですよ! 盗賊団なんて、汚らしい!」


予想外の反応だったのか、首領と思わしき男は少しのけぞって驚き、その後にニヤリと笑った。


「そうかよ。だったら、覚悟はいいんだな」


途端に、顔に青みがかかる。目がすわり、歯に力を入れる。これから殺しをする目なのだろう。


「ふっ!」


珍しく奇声をあげずに、ジャヴさんが手斧を投げる。


「ボス!」

「おおっと」


男は、その手斧を難なくかわす。意外と早い動きを僕たち全員が見て取った。


「へへ、残念だったな。だが、これで楽には死ねなくなったぜ」


すでに周りには円ができている。僕たちは自然と円陣を作り、構えをとる。


「痛え……痛えよ……ボス、早くやっちまって下さい!」


男達の中から、泣き声にも似た叫びがあがる。先ほど僕が足を切りつけた男だ。


「るせえ!おい! 先にそいつをやれ!」


首領らしき男が叫ぶと、周りの男が武器を抜く。


「え……おい、ちょっと」


自分が標的になったのがわかると、男は慌てて陰に隠れようとする。脚を引きずって後ずさりしたところを、側の男に首をはねられた。


「俺に指示するな!」

「ボス、今のは指示じゃないですぜ」

「あ、やっぱりそうか!? まぁ、あの脚じゃ、どうせ使い物にならないからな!」


笑い声が響く。

僕たちは、それを黙って見つめている。今さら死体が一つ増えても何も思わないが、この男が来てから、場に一層の緊張感が生まれた。

バラバラだった盗賊団に、統率が生まれつつある。それが、なによりまずい。


「長物を持ってるやつ、殺しをしたいやつは前に出ろ!」

「おう!」


ざっと、数名の男たちが前に出る。


「よし、お前ら。せぇのでいくぞ。女はなるべく殺すなよ!」


さらにもう一歩分だけ円が狭まる。


「いいか!上手くやったやつは、二番乗りだ! まだ綺麗なうちにやれるぜ!」


だんびらを抜くと、振りかざした。


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