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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十五章 旅立ち
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旅の記録 -8

暗闇から急に人が出てくるたびに、肝が冷える。周りを見渡せることができないのが、とても恐ろしい。

混戦状態では同士討ちを避けるために、飛び道具を使わないのがセオリーだが、彼らにそれを守る気があるのかどうか、疑わしい。


順調に行けば、道が開けるはずなのだが、中々前に進めない。


「ちっ、やっぱり、国境側に厚く張ってやがったな」


ジャヴさんが舌打ちをする。

ララベルさんとジュリアさんが前方の敵を倒しているが、突破しようとしても次から次へと前を塞ぐ男が現れる。

前に進み続けて、誰もいない場所へ出ないといずれ囲まれる。そうなれば、大変不利な状況になってしまう。


「僕が出ます!」


ジャヴさんとマックスさんの言葉を待たずに、ララベルさんとジュリアさんの間に飛び込む。

体を低くして、闇夜に潜り敵に迫る。


「あっ! ララベル、ジュリア! 気をつけろ!レイルが行ったぞ!」


あの二人なら、僕に当てるようなヘマはしない。

僕は膝を曲げてスライディングをして、前方の男の膝元に飛び込み、ふくらはぎを切りつける。


「なっなんだっ」

「気をつけろ! すばしっこいやつがいるぞ!」


僕が切り付けた男は、バランスを崩して倒れる。その陰から、大きな斧を持った男がのっそりと現れる。

僕は、男の獲物を確認すると、足にためていたマナを使って片足で立ち上がり、そのまま斧を持った男の懐に飛び込む。


「おっおい」


男が斧を振り上げる前に、僕は一気に距離を詰める。

ちょうど真上に斧が来た時に、喉に赤い線が走り、男は振り上げた斧を掲げたまま後ろに倒れた。


「早い……!」

「あいつ、あんなに早く動けたのか」


背後から、ジャヴさんとマックスさんの驚きの声が聞こえる。

直線距離の速度でいえば、僕はそこまで早くないだろう。小柄だから早くなるというのであれば、短距離走の選手は皆、小柄なはずだ。

僕が早いのは、加速と方向転換だ。それだけは、小柄な人間が大柄な人間よりも圧倒的に早い。男達は、僕の速度についていけなかった。


(いける……通用する!)


これは、僕が入院中に動けない時期に考えた戦法だった。剣精のように確かな技術がなく、ジャヴさんのような優れた体もない。体の大きさでイニシアチブをとる相手には速度を使い、剣術を身に着けた相手には、アーツを使う。

それが、今の僕ができる最善の選択のはずだ。

急激な方向転換でかかる足への負担は、マナを使いカバーする。

僕はもう一段ギアを上げて、さらに盗賊たちを翻弄していた。


僕が戦線を崩したところに、ララベルさんとジュリアさんが切り込み道を開く。


「レイル君! 一旦引いて!」


ララベルさんの声を聴いて、僕はジャヴさんと位置を合わせる。そこへ、盗賊たちがなだれ込んできた。


「多い……」

「ジャヴ、本当に40人なの!?」


その数に、僕たちは焦りを感じ始める。

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