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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十五章 旅立ち
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旅の記録 -7

「ギャッ」

「うわああっ」


前方から数名の悲鳴が聞こえる。この暗がりでも命中させるとは、さすがジャヴさんだ。


「今よ! はぐれないで!」


ララベルさんが指揮をとり、進行が始まる。

僕の予想でしかないが、おそらくこの盗賊達は僕たちを戦える人間だとは思っていなかったのではないだろうか。油断しきった指揮系統、稚拙な情報伝達。SSLとは練度がまるで違うとわかる。

だが、それでも数の差は覆せない。ジャヴさんの読みが正しければ、単純計算で一人当たり八人を倒さないとならないのか。


「避けられるなら、乱戦は避けろ。どんなに強くても、ちょっとした不運で命がなくなるんだ。例えば、誰かが避けた槍が死角から出てきたとして、それを避けられる人間なんていない。だから、なるべく乱闘には巻き込まれないようにするんだぞ」


剣精の言葉が脳裏に響く。思えば、僕は剣精の教えと逆なことばかりをしている気がする。

ひょっとして、剣精は僕が言うことを聞かないから、愛想をつかしてどこかに行ってしまったのかもしれないな。そんな考えが浮かんで、頬が緩む。


「おっ、余裕じゃーん」


ジュリアさんが、僕の笑顔を目ざとく見つける。


「そんなことは……」

「ふっふっふ。レイル君、いいことを教えてあげよう。相手はだいたい40人だけど、半分くらいぶった切れば、残りの半分はまず逃げていくから、相手にするのは実質20人くらいだよ。一人当たり、4人で済むと考えれば、楽になるんじゃないかな?」

「たしかに……?」

「俺はさっき二人倒したから、あと二人だな!」

「情けないなー。俺が全員倒すとか、言えないのかね」

「だってその……手斧の数が……」

「あはははは!」


ジュリアさんが、大声で笑う。完全にハイになっているようだ。ひょっとすると、わざわざ僕の様子を見に来てくれたのだろうか。


「くるよ!」


ララベルさんが叫ぶ。前方に男が三名、立ちふさがっている。士気は、まだ高いようだ。


「ほっ!」


一名が、ジャヴさんの手斧を頭に受けて倒れた。暗闇の中で、投擲が見づらいようだ。


「私とララベルが突破だね」


速度を緩めず前方に突っ込んでいき、ララベルさんとジュリアさんは同時に槍と棍を突き出す。


「横から来ても、なるべく止まらないで! ジャヴ、レイル君とマックスさんのカバーをして」


ララベルさんの言う通り、僕たちは立ち止まった瞬間に囲まれてしまうので、走り抜けていくしかない。

横から飛び出してきた男を、僕は投げナイフで倒す。入院中に腕を磨いた成果が現れたようだ。ナイフを使って戦う僕は、万が一力が強い相手に掴まれたら脱出することが困難になる。極力至近距離での戦いを避けなくてはいけない。


「ふんっ!」


後ろでは、マックスさんが振るうバトルハンマーが、血しぶきと一緒に色々なものをまき散らしている。ようやく、強面のマックスさんらしいところが観察できた。

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