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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十五章 旅立ち
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旅の記録 -7

「皆! 起きろ! なんかやべえぞ!」


深夜、ジャヴさんの怒号で、小屋の中の僕たちは叩き起こされた。咄嗟にナイフを掴み、立ち上がる。僕がジャヴさんと交代してから、そんなに時間が経っていないようだが、何があったというのか。

表に出ると、無数の松明が小屋を取り囲んでいた。なだらかな丘をぐるっと囲んで、荒々しい気配が感じられる。

時折聞こえる金属音から察するに、武装をしているようだ。


「これは……」

「盗賊団ってとこかな」


ジュリアさんが、冷静に述べる。


「ジュリアさん、何か気づいていたんですか」


思い返せば、ジュリアさんだけが小屋に対して特に警戒をしていたような気がする。


「うーん、囲まれやすい場所だなって思っただけだよ。でも、こんなことになるなんてねー」


言葉とは裏腹に、ジュリアさんの表情は暗くない。久しぶりに暴れようと思っているのが、見て取れる。対照的に、他のメンバーの顔には緊張感が走っている。何せ、相手の人数が多い。


「金目のものを置いていけ!殺しはしない!」


首領らしき男が、大声をだす。


「40人ってところか……」


苦虫を噛み潰したように、ジャヴさんが呟く。


「向こうには、馬は少なさそうです。薄いところを馬で駆け抜けられるのでは」

「松明を近づけられると、転倒の危険があります」

「……」


「諦めろ!都会のおぼっちゃんお嬢ちゃんたちには荷が重いぜ!」

「素っ裸で降りてくれば、殺しはしないぜ!」

「男だけは、そのまま見逃してやるよ!」


野次が投げ込まれるたび、ガハハと笑いが波のように広がる。


「ララベル、どうする」

「今考えてる。ジュリア、飛び出さないでよ」

「ふふ……しょうがないなぁ」

「優先順位が高いのは、レイル君の安全です。ただし、レイル君だけが助かって私やジュリアが捕まっても、任務遂行は困難でしょう。ならば」

「……やるしかないって、ことだろ?」


ジャヴさんの言葉に、皆が頷く。


「とにかく、この場所はまずいの。囲まれているし、火をかけられたら、隠れるところがない。やるなら、森の中か、背後の安全なところにしないと」

「なら、俺が斧を投げて道を作るから、そこに固まって逃げるか」

「そうね……国境までは歩ける距離です。馬はひとまず諦め、まずは国境へ避難を目指しましょう。各位、生存が第一目標よ」

「ララベル」


ジュリアさんが、ララベルさんの名を呼ぶ。


「……いいわ」


言葉数は少なかった。だが、その場にいる全員が、今のは戦いへの許可だとわかった。SSLの刃が、今抜かれたのだ。


「私たちを、都会のお嬢ちゃんと言ったのはいいけれど、甘くないというところは、わからせてあげましょ」

「それ、満更でもないのかよ……」

「いいから、やって!」

「よっしゃ。準備はいいな……ヒャッハァァ!」


ジャヴさんの奇声が深夜の闇を震わせる。


「な、なんだ!?」


どよめく盗賊団の松明を目印に、連続で手斧が投げ込まれる。


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