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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十五章 旅立ち
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旅の記録 -4

「ん? 何がだ?」


ジャヴさんがマックスさんを押しのけて前方を見る。


「あの辺なんですけど、なんか、木が動いているような……」


マックスさんが指差す方には、特に鬱蒼と木々や草が固まっていた。森と平原の境目にしては、不自然な密度だ。

目を凝らして見ると、確かに茂みの辺りで、何かが動いている。


「リスとか狼じゃないの?」

「いえ……何か、変ですね」


それは動物の動きではない。部分的に何かが動いて当たっているのではなく、枝先までが絶え間なく、ゆっくりと波打っているのだ。


「近づいてみましょう」


僕はナイフを抜いて先陣を切ろうとする。


「ま、待てって。行くのはいいけど、お前が先頭はダメだ。お前は、後のアーツ審査があるからな。俺かマックスが行く」


行く、と言いつつ、ジャヴさんは動く気配がない。


「えーと、じゃあ僕が……?」


マックスさんが空気を読んで手をあげる。


「おう!やっぱり、発見した言い出しっぺが行かなきゃな!」

「……」

「……」


念のため馬を待機させ、僕たち三人は武器を抜いてにじり寄る。

僕とマックスさんが近寄るにつれて、木は動きを速めているような気がする。

改めて、その姿を観察する。低木の木が植栽のように固まって生えているように見えるが、お互いに絡み合っていて、その枝が動き続けている。枝についている葉はまばらだが、本数が多いのでまとまって見える。


「お、おい、あんまり近づかない方がいいんじゃないか」

「しっ……」


マックスさんが太い指を立てて遮る。いつになく真剣な表情に、僕とジャヴさんはおとなしく従うよりなかった。マックスさんは、近くの小石を持つと、藪の方へと投げた。特に反応はない。

ゆっくりと一歩を踏み出し、手を伸ばすと、やはりわずかだが動きが早くなっている気がする。


「どうやっているのかはわかりませんが、生き物に反応していますね……。見てください、あの根本の辺りに動物の死骸が見えます」


マックスさんが指す場所には、確かに小動物の骨のようなものがある。陰になってよく見えなかったが、骨の周りには植物がまとわりついている。


「絡まった動物を、ああやって殺すのでしょう」

「あれは、変異呪種ですか?」


僕がマックスさんに聞く。


「おそらく、そうでしょう。野生の植物には、あんなのは見たことないですね」

「草が動いて、動物を殺すのかよ。すげぇなぁ」

「あの藪がこれ以上巨大化するのかは、わかりません。この距離なら、まず安全だと思いますけど……処置は、ララベル隊長に報告しましょう」


僕もジャヴさんも、異存はない。馬を近寄らせないようにしつつ、キャンプのための薪を手早く拾い集め、元来た道を戻る。


「あ、お帰り」


ララベルさんとジュリアさんは、設営を粗方終えて休憩しているところだった。


「ララベル隊長、実は……報告しなければいけないことがあります」

「あ、はい! なんでしょう」


マックスさんの真剣な表情に、ララベルさんも驚いたようだ。


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