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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十五章 旅立ち
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旅の記録 -1

1日目


休憩中、馬に草を食べさせながら、ララベルさんは皆を集めて地図を広げた。


「今日は、この辺りまで到達するのを目指します」


ララベルさんが指したところは、道から少し逸れた森の近くだ。水辺も近く、野営に問題はなさそうな場所だが


「野営ですか」


僕は疑問を出す呈した。野営することに不満があるわけではないが、少ししたところに宿がとれそうな街があるようなのだ。


「街が近いって言いたいのね。もっともな着眼点だけど、レイル君、SSLでの遠征は、初日は必ず野営よ」

「そうなんですか」

「野営に必要な物を忘れていないか、初日に確認できるからね。本当に必要なものだったら、まだ引き返せる距離だし」

「なるほど……」

「そうだったのか! 俺はてっきり、コボル警備長が段取りを失敗したのかと思ってたぜ」

「コボル顧問に限って、そんなわけないでしょ……ったく。レイル君、いい機会だから覚えておいてね」

「はい」


休憩が終わり、再び移動を始めた僕たちは、再び隊列を組んで進行を始める。公道とはいえ、人通りもまばらになってきた。


「野営の判断は難しいのよ。遅くても夕方までには準備をしないと、暗くなってからじゃ薪も拾えないし、月明かりだけじゃ、テントを張るのも苦労するからね」

「はい」

「夜中に馬を走らせて、馬が怪我をしたら、遠征失敗はほぼ確定だからね。夜への対処は早目にしないといけないのを、覚えておいて」

「わかりました」

「いい返事……」


マックスさんが何か言ったが、聞こえないふりをする。

それから数時間、馬をゆっくりと走らせて、僕たちはおおよその目的地までついた。見通しのいい開けた空き地で、馬が好むイネ科の草も多く生えている。

ララベルさんは馬から降りて労うと、僕たちを見まわす。初日ということもあり、皆の顔に疲れは見えない。


「まず、最初に前三人が近くの川まで交代で馬を連れていきます。待っているチームは、その間に野営の準備をしましょう」


全員が、指示通りに動き始める。

水を汲んで戻ってくると、ジュリアさんとマックスさんが男女別のテントを設営していた。


辺りはまだ明るいが、これから暗くなるのはあっという間だ。

ジュリアさんたちが出かけている間、僕たちは焚火に使いそうな枝を拾い、水を飲み終えた馬を近くの木にとめ、火をおこす。

すぐにジュリアさんたちが戻ってきたので、持ってきた食糧のうち、日持ちしないものから先に食べ始める。一日の活動時間に比べて、明らかに少ない食事だが、ペース配分があるのだろう。ジャヴさんもマックスさんも、不平を言わずに黙々と食事をしている。

食事が終わると、辺りはすっかり暗くなっていた。ララベルさんの言った通り、野営の判断を誤ると暗闇の中に全員が放り出されることになるだろう。


「見張りと火の番は交代で行います。五人いるから、二時間ごとに交代しましょう。今日は晴れてるから、月の位置で大体判断してください。交代したら、寝る前に次の人の薪を準備してね」


全員が首肯する。


「私、レイル君、ジャヴ、マックスさん、ジュリアの順番でいきます。各自、自分の順番がくるまではゆっくり休むこと」


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