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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十五章 旅立ち
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旅立ち -6

南門へ向かうために、馬をひいて首都を突っ切っていると、見知った顔に出会った。


「お、レイルじゃないか。どうしたんだ、馬なんかに乗って」


志位さんが、いつの間にか横について歩いていた。任務中なので、小声で会話する。


「こんにちは。ちょっと、任務で外出することになりまして」

「ほう」


志位さんは、隊列とそれぞれの荷物をジロジロと見回す。嫌な予感がする。


「よし、僕も連れてけ」


迷いのない言葉だった。


「えっ、ダメですよ」

「大丈夫だ。この寝袋に入っているから、気にしないでくれ」


馬が背負っている、僕の寝袋に入り込もうとする。


「ダメですよ、ダメ! サさんに怒られますよ」


僕は前にいるララベルさんの方を見る。まだ、こちらに気づいてないようだ。後ろのジュリアさんは、ニヤニヤしながらこちらを見ている。戦闘以外、全く頼りにならない人だ。


「じゃ、馬を借りてついていくから、どこに行くか教えておくれ」

「さっきも言いましたが、任務なんですよ。すみませんが、特に外国の人に知られたらまずいんですって」

「ふーん」


口を突き出し、つまらなそうな顔をする。もう一度隊列を見直す。


「よし、わかった」

「わかってくれましたか」

「サに聞いてみれば、行き先がわかりそうなことがわかった」

「え……」

「また後でな!押掛け女房には、よろしくいっておいてくれ」

「あっ、ちょっと!」


志位さんは、踵を返すと別の方向へ走り出してしまった。足音を殺して走っているのに、凄い速さだ。


「あ……」

「行っちゃったね~。どっちが押しかけ女房か、わからないけど」


ジュリアさんが、後ろから話しかけてくる。面白いものをみて満足という表情だ。


「レイル君、今の人はどちらさま?」


僕の後ろを歩いていたマックスさんが、恐るおそる聞いてくる。


「ちょっとした知り合いです。任務中に、すみません」

「ううん、困ってたみたいだから……ごめんね、僕、知らない人は怖くて」

「大丈夫ですよ」

「優しい……」


うなじのあたりに、しっとりとした視線を感じる。出発する前から、なんだか疲れる。

門に着くと、人混みでごった返している。以前に僕が使った北門と違うのは、人の出入りが圧倒的に多いということだ。SSL以外にも、警備にあたる軍人の姿もちらほらと見える。


「私たちは、あっちね」


ララベルさんは、SSLの詰め所を指差す。公人用の出入口がありそうだ。

人の流れを見る限り、入門の審査は入る時は厳しいが、出るときはほとんどノーチェックのようで、非常時でなければ、首都を出るのに苦労はなさそうだ。


簡単な手続きを済ませて城門を出ると、人の列が延々と続いている。端の方を誘導する軍人と、疲れ切った人々の目が印象的だ。


「凄い人の数ですね」

「なんだかんだで、解呪のメッカだからな。人の出入りは世界有数だ。商人用のパスを持っていれば、もう少しスムースなんだが、取得はなかなか難しいらしい」

「あの辺りにいる人は?」


僕は、並んでいる人たちに声をかける男について聞く。


「野良の解呪師だな。この行列を待たずに済む分、高くつく。それに、国の保証もないから腕も怪しいらしいぜ」


SSLの腕章をつけている僕たちとは、決して目を合わせようとしない。僕たちも、今は彼らにかまう時ではない。

広い道に出ると、全員が乗馬した。


「それでは、まずは南の道沿いに進みます。私がペースをつくるので、遅れないように」


ララベルさんは、全員の同意を確認した後、馬を出発させる。ジャヴさんがそれに続いたので、僕も出発をする。

こうして、僕たちの旅が始まった。

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