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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十四章 入院
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旅立ち -1

九か月後。

剣精は、未だに見つかっていない。SSLや軍の捜索は、表向きは半年ほどで打ち切られた。この国に対して、精霊の所在を失ったということで諸外国から非難があったらしいのだが、ようやくそれも落ち着いてきたようだ。

僕は退院をしてすぐ、SSLの武器番に変わった。色々と議論があったようだが、笛番のままでは命を守ることができないというのが、一番大きな理由だったようだ。


「剣精は、消失をしたのか、どこかへ出かけたのかの、ニ択だと思われる」

「消失……ですか」

「ああ。武の精霊達は、自分を超える存在に精霊格を譲り渡し消失すると言われている。つまり、剣において剣精を超える存在が現れ、剣精を打ち負かしたたという可能性がある」

「剣精を超える存在なんて……ありえるんでしょうか」

「ないとは、言えないさ。剣精も、その前の剣精に勝ったということになるのだから」


僕は、初めて聞く事実の連続に驚きを隠せない。何か意図があってのことかわからないが、剣精は精霊というものについて何も説明してくれなかったことに気づく。


「現在は剣、槍、弓、拳の四精霊が確認されている。そのうち、わが国にいたのが剣精。次に近いのは隣国の弓。槍は所在不明、拳は……東の国にいるらしいが、なんでも精神に異常をきたしているらしい」

「精霊が……精神に異常をですか」

「あくまで噂ではある。だが、そもそも東の国まで遠征するのは難しいだろう」


東の国と聞いて、僕は志位さんたちの顔を思い浮かべる。名前だけは聞いたことがあるが、どれだけ遠いのか、僕にはまだ想像がつかない。


「つまり……現実的には剣と弓しかいないということなんですね」

「そうだ。弓の精霊は偏屈な爺さんらしいが……ほかに選択肢がない」


僕は、コボル警備長……いや、コボル顧問の車いすを押しながら、まだ見ぬ精霊に思いを馳せる。

王宮治療班の必死の治療の甲斐もあり、コボル顧問は一命をとりとめた。だが、下半身に麻痺が残り、責務が果たせないとして、完治を待たずして自ら警備長を辞任した。

同時に、周りからの強い要望を受け、剣精がいなくなった後のSSLと軍の剣技の指導員として、就任をしたのだ。


そのころ、剣精から特訓を受けるという目的がなくなった僕は、夜勤専属からはずれることになった。日勤の勤務でSSL本来の業務につき、夕方からは皆と一緒にコボル顧問から指導を受けるというライフサイクルになった。

コボル顧問の訓練は、剣精の時と打って変わって、肉体的な強化がメインになった。理論と実践を主とする剣精とは多くの面で対照的だったが、剣精の特訓を否定するつもりはないという。


「技は剣精から教わったものや、自分で考えたものを育てたほうがいいだろう。俺は、レイルの体が戦士として育つ手助けをするだけだ」


というのが、コボル顧問の弁だった。

肉体強化と型や素振りに明け暮れ、身長も若干ではあるが伸びたころ、長らく頓挫していた、僕のアーツ・ホルダー昇格の話が出てきた。

肝心の剣精がいない状況では、審査を行えない。そこで、他の精霊のところへ行ってみれば……というのが、コボル顧問が出した案だった。


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