入院 -7
「皆さん……」
集まってくれた人たちの多くは、SSLとは関係のない市井の人達だ。自分たちの仕事や生活があるだろうに、こうして僕を助けにきてくれたのかと思うと、文字通り頭の下がる思いだった。
上手く言葉を紡げずにその場に立ちすくんでいると、僕はズボンの裾を引っ張る存在に気がついた。
「君は……」
その女の子は、黒馬事件のときに助けた子だった。上手く目を合わせられないのだろうか。うつむいたまま、僕のズボンにしがみついている。
「まだ上手くしゃべれないけど、お見舞にきてくれたんだよ」
付き添いの女性が、説明をしてくれた。
「そっか……ありがとうね」
「……」
本当なら膝を折って話したかったのだが、体の不自由がもどかしい。上から見下ろす形のまま、ほほ笑む。
女の子は、かすかに頷くとそのまま後ずさりをして去っていった。
「怖いことを思い出させちゃったかな」
「君が傷だらけなのも、原因だと思うよ。人が怪我をしているというだけで、怖いんだ」
「そうですか……」
女性の言うことも、もっともだろう。
「さて……」
「もういいか? 病室にもどろうぜ」
「はい。みなさん、ありがとうございました」
僕はジャヴさんに支えられながら、頭を下げる。
「がんばれよー」
「ゆっくりしたら、戻っておいで」
「皆さんも、気を付けてくださいね」
僕とジャヴさん、ララベルさんは病室を後にする。
「ところで……」
「剣精様なら、見ないね」
「そうですか……」
夜で暇なら、なんとなくあの場所に剣精がいると思ったのだが、
「ふがいない弟子に怒っているのかもしれませんね」
「うーん、剣精様のことだから、それはないと思うけど」
「そういえばララベルさん、ジュリアさんは大丈夫でなんですか?」
「えっ、あ、そうだ! 忘れてた! ジャヴ、レイル君を病室までお願いね」
手を叩くと、ララベルさんは門の方へと走っていった。
「剣精に、新しい技のことを相談したかったんだけどな……」
「ええ……もう次の戦いのことを考えてるのかよ!?」
「それ、リンダさんにも言われました」
ジャヴさんの言葉に、僕は苦笑いをして頭を掻く。
「そりゃそうだろ……バトルマシーンかよ。いくらなんでも、少し休まないとまずいぜ」
「う……」
ジュリアさんが言っていたように、ジャヴさんは見た目ほど無茶な人間ではない。初めて見る、咎めるような視線に耐えられなくなって、僕は慌てて話題をそらす。
「バトルマシーンか……剣精なら、なんていいますかね?」
「しらん……だが、確かに、剣精なら笑いそうではあるな」
「ちょっと楽しみです」
「……」
だが、剣精が見舞いにくることはなかった。
それどころか、この日を境に剣精は公の場から姿を消す。
翌日にアーツ審査の場所に現れなかった剣精を探すため、王宮や神殿で大掛かりな探索が行われたが、そこは最初から誰もいなかったかのように、もぬけの殻だったという。
僕は怪我が治り退院するまで、剣精の失踪を知らされずに過ごすこととなった。