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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十四章 入院
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入院 -7


「皆さん……」


集まってくれた人たちの多くは、SSLとは関係のない市井の人達だ。自分たちの仕事や生活があるだろうに、こうして僕を助けにきてくれたのかと思うと、文字通り頭の下がる思いだった。

上手く言葉を紡げずにその場に立ちすくんでいると、僕はズボンの裾を引っ張る存在に気がついた。


「君は……」


その女の子は、黒馬事件のときに助けた子だった。上手く目を合わせられないのだろうか。うつむいたまま、僕のズボンにしがみついている。


「まだ上手くしゃべれないけど、お見舞にきてくれたんだよ」


付き添いの女性が、説明をしてくれた。


「そっか……ありがとうね」

「……」


本当なら膝を折って話したかったのだが、体の不自由がもどかしい。上から見下ろす形のまま、ほほ笑む。

女の子は、かすかに頷くとそのまま後ずさりをして去っていった。


「怖いことを思い出させちゃったかな」

「君が傷だらけなのも、原因だと思うよ。人が怪我をしているというだけで、怖いんだ」

「そうですか……」


女性の言うことも、もっともだろう。


「さて……」

「もういいか? 病室にもどろうぜ」

「はい。みなさん、ありがとうございました」


僕はジャヴさんに支えられながら、頭を下げる。


「がんばれよー」

「ゆっくりしたら、戻っておいで」

「皆さんも、気を付けてくださいね」


僕とジャヴさん、ララベルさんは病室を後にする。


「ところで……」

「剣精様なら、見ないね」

「そうですか……」


夜で暇なら、なんとなくあの場所に剣精がいると思ったのだが、


「ふがいない弟子に怒っているのかもしれませんね」

「うーん、剣精様のことだから、それはないと思うけど」

「そういえばララベルさん、ジュリアさんは大丈夫でなんですか?」

「えっ、あ、そうだ! 忘れてた! ジャヴ、レイル君を病室までお願いね」


手を叩くと、ララベルさんは門の方へと走っていった。


「剣精に、新しい技のことを相談したかったんだけどな……」

「ええ……もう次の戦いのことを考えてるのかよ!?」

「それ、リンダさんにも言われました」


ジャヴさんの言葉に、僕は苦笑いをして頭を掻く。


「そりゃそうだろ……バトルマシーンかよ。いくらなんでも、少し休まないとまずいぜ」

「う……」


ジュリアさんが言っていたように、ジャヴさんは見た目ほど無茶な人間ではない。初めて見る、咎めるような視線に耐えられなくなって、僕は慌てて話題をそらす。


「バトルマシーンか……剣精なら、なんていいますかね?」

「しらん……だが、確かに、剣精なら笑いそうではあるな」

「ちょっと楽しみです」

「……」


だが、剣精が見舞いにくることはなかった。

それどころか、この日を境に剣精は公の場から姿を消す。

翌日にアーツ審査の場所に現れなかった剣精を探すため、王宮や神殿で大掛かりな探索が行われたが、そこは最初から誰もいなかったかのように、もぬけの殻だったという。

僕は怪我が治り退院するまで、剣精の失踪を知らされずに過ごすこととなった。

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