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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十四章 入院
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入院 -6

「と、言うと……」

「あいつは、我々の国では五本の指に入る使い手なんだが……最近は好敵手に恵まれんでな。今回、私たちに同行したのも異国のものと手合わせができるという理由があったから……だと思う」

「あの女性の方も、相当強いようですね。ウと同じ気風を感じます」

「じゃ、じゃぁ、あの二人が出ていったのは」

「おそらくだが、どこかで戦うんだろう。なに、お互い大人だから怪我はないようにしている……と思う」


志位さんの言葉を聞いても、ララベルさんは顔を沈めたままだった。


「でも」

「む、腑に落ちんか」

「確かに、ジュリアも好敵手に会っていないところがあるから、手合わせの相手を探しているというのは、わかるんだけど……」

「んむ」

「それ以上に、あの子は奔放というか、気に入った相手と……その……」

「?」


口を開けて首をかしげる志位さんに、サさんがそっと耳打ちをする。


「ようするに、別のことをおっぱじめてないか心配だってことだな」


ジャヴさんが、身も蓋もないことを言う。

サさんの話を聞き終わった志位さんは、耳を真っ赤にして慌てだす。


「なっ……そっ、そんなこと、うちのものに限って」

「ない、とは、言いきれませんな……」

「あわわ……僕、ちょ、ちょっと見てくる!」

「あ、若、お待ちください、我々だけでは…」

「ん!? あ、そうだった。そこの押しかけ女房、ついてきてくれるか。交代するから」

「しょうがないな……っていうか、押しかけ女房じゃありませんから!」


ララベルさんは、リンゴの皿を僕に渡すと、立ち上がる。


「ん?」


そのやりとりに僕は違和感を覚えた。


「どうして、ララベルさんも……?」

「ああ、我々が出るときは、この国の人間と出るように言われているからな」

「ああ、なるほど。では、交代というのは?」

「うっ」

「ぐっ」


ララベルさんとジャヴさんの二人が、苦しそうな声を上げる。


「ほう……さすが、レイルは勘が鋭いな」

「若……」


サさんが、頭を抱える。


「なんでこの子が偉そうに分析みたいなポジションにいるのよ」

「申し訳ありません……言って聞かせますので」


サさんが皆に頭を下げる。


「そういえば、さっきジャヴさんも、みんな、レイルが目を覚ましたって言ってましたね」

「げっ」


目が飛び出そうなジャヴさんの表情を見て、僕は、ベッドから降りて立ち上がる。


「痛っ……」


切れた足の指が、刺さるように痛む。そして、足を見ようとすると、今度は胸の傷が引っ張られて動けなくなる。


「レイル君、まだ動かない方が……」

「ちょっと、そこまでですから」


全身を怪我しているので、どこかを動かすたびに、どこかが痛むのを思い出す。基本的な体力が落ちているのか、マナがすぐに切れる。

だが、それでも確かめたいことがあった。


「ったく、しょうがねーなー」


そう言って、ジャヴさんが肩を貸してくれる。といっても、身長差があるので、僕の脇の下に腕を通すような格好だ。

廊下に出て、左右を確認する。人の気配がする方は……右だ。

廊下の角を曲がる。後ろを見ると、ララベルさんが着いてきてくれている。


「ダメだ、ララベル。こいつ、恐ろしく感が冴えてるぜ」

「そうね……怪我のせいかも」


二人は、肩をすくめて諦めたような仕草をする。


「これは……」


明かりが灯っていた広い部屋の中には、数人の兵士が集まっていた。そして、その兵士に囲まれて、街の人達も十数人がソファに座ったり、床に横になったりしている。


「ここにいる人達は、皆……」


僕が話したことのある人達ばかりだ。


「そう。目覚めるのを待っていたり、ヒーリングができる人達は、順番であなたにマナを供給してくれていたの」


ため息を付いて、ララベルさんが答える。

僕達の話し声に気づいたのか、中の人達が一斉に顔をあげる。


「レイル! 歩けるのか!」

「っていうか、もうバレたの!?」

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