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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十四章 入院
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入院 -5

形容しがたい雰囲気の室内の空気を変えたのは、またしても来訪者だった。


「レイルっ、遊びに来たぞっ!」

「若……嘘でも、見舞いといいましょう」

「えっ志位さん!?」


次に病室に現れたのは、志位さん一行だった。病室が珍しいらしく、入室するなり色々と見回しては手を触れている。


「ここ、王宮なのに……どうやって、入ったんですか」


恐る恐る聞いてみる。まさかとは思うが、忍び込んでいたのなら大問題になる。


「剣精殿に一筆書いてもらったのだ」

「あぁ……なるほど。よかった」

「レイルさん、我々を若と同じ程度の頭だと思われては困ります」


サさんが抗議の声を挙げる。


「全くだ。ほっかむりをつけて部屋から抜け出そうとするこいつを止めるのには、苦労したぜ」

「なにおう。お前らだって、毎日暇してたろ」

「毎日毎日……書類を書いていましたが……あれがどうやったら暇に見えるんですか……?」


肩を震わせたサさんが恨みがましく言うのを、 ウさんは肩を叩いて慰める。


「どれ、傷を見せてみろ」

「これがこの国の病室ですか。清潔にされていますね。さすが王宮の中だけあって、調度品もいい」

「む、この妙な形をしたガラス瓶はなんだ」


さっそく、三人は好き勝手に動き始める。


「あの、レイル君その人達は……」


突然の見舞客にあっけにとられていたララベルさんだったが、気を取り直したのか、僕に尋ねる。


「ええと、以前アーツ審査にきていたのを道案内したんですよ」

「へぇ……」

「その場には、俺もいたぜ!」

「へぇ……」

「あれ、声のトーンが違わない?」

「別に。それにしても、レイル君にも、私たちの知らないところで友達ができているのね。なんだか安心しちゃった」


頬に手を当て、ニコニコとするララベルさんだったが、志位さんはそれを見て意地悪く口を出す。


「レイル、リンゴを剥いているこの女は……押しかけ女房のようなものか」

「なっ……だっ……」

「ち、違いますよ。職場の上司です。色々と良くしてもらっています」

「ほう……監督者か。器量はよし。腕もそこそこのようだが……こっちの人間にしては、出るとこが出てないな」


突然の暴言に、ララベルさんは社会人モードを忘れ、素の表情でパクパクと口を開け閉めしている。


「若……遺恨を残しかねません。その辺で……」

「レイル君、こちらのお子様に、後で個人的にお話しをさせてもらっていいかしら」

「なっ、誰がお子様か!」

「りんご美味しい」


人が増えたことで、場が混沌としてきた。一人寂しくいるよりはいいのだが、リンダさんが戻ってきてこの騒がしい病室を見たら、大目玉を食らうことになりそうだ。


「やれやれ、騒がしくなってきたね……ちょっと、そこの人」


場の空気が合わなかったのだろうか。さっきまで僕にアドバイスをくれていたジュリアさんだったが、肩をすくめて、ウさんに声をかけた。


「ん? 俺か?」

「そう。あなた、『話が早い人』でしょ?」

「……ああ、まぁな」

「なら、ちょっと付き合ってよ」

「へぇ……いいぜ。やろうか」


意味深長なやり取りの後、ジュリアさんとウさんはニヤリと笑って出て行ってしまった。


「ど、どういうこと!? レイル君、あの二人は知り合いじゃないよね」


一部始終を見ていたララベルさんが、慌てて僕に聞く。


「多分、初対面だと思いますけど……」

「い、今のが、せ、性の乱れってやつか!」

「そこの押しかけ女房とモヒカンよ、慌てるな。あれは……お主の考えるようなものではない」


志位さんと、サさんが二人をたしなめる。

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