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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十三章 刺客
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入院 -1

・・・今度の眠りでは、悪夢を見なかった。

ゆっくりと目が覚めると、体中が包帯でぐるぐる巻きになっていた僕は、まず自分が身動きが取れない状態であることに驚き、すぐに全身の痛みで事情を思い出した。

胸、足、手。同時に襲ってくる痛みが、自分の命を実感させてくれる。両手はほとんど動かないが、今は傷の具合を確かめる術はないだろう。後で、医者に聞いてみればいいか・・・そう思っているうちに、意識を失った。


・・・誰かが、病室で話している気がするが、意識を集中できない。複数の人達が言い争っていて、女の人が泣いているような気がする。きっと、僕のせいなのだろう。止めようとして口を開く前に、再び意識を失う。


・・・ようやく、目覚めた時の意識が克明になってきた。ここは病室、外は真っ暗だ。天井が変わっているので、前に男に襲われた部屋とは違う場所のようだ。試しに起き上がろうとして、腹の辺りに何か重いものが乗っていることに気づいた。

そのあたりは切られていないはずなのだがと思いながら、苦労して上体を起こすと、人が僕の掛け布団に覆いかぶさっているのがわかった。暗くて、誰なのかはよくわからない。

今まで、看病をしてくれていた人なのだろうか。疲れて眠ってしまったのだとしたら、起こさない方がいいかもしれない。僕は体を倒して、嫌でも浮かんでくるあの戦いにつて、思いを巡らせる。


あの男は、間違いなく強敵だった。植物を自由に硬質化できる特性、隙が少なく高速の連撃。まともにやって勝てる相手ではなかったと思うが、自分で自分の能力を自慢したことで勝機に陰りが出たのだろう。何度かシミュレーションをして、そのたびに自分が切られる絵を描いた僕は、使い手の精神面に助けられたことを実感する。

生きているのが不思議なくらいの、激しい戦いだった。思い出しただけでも、喉が渇く。僕はサイドテーブルに置いてある水差しを使おうとして、身をよじった。


「むにゃむにゃ・・・レイル・・・」

「・・・ん?」


寝言だけ聞けば可愛い文面なのだが、その声は野太い男のそれだ。


「・・・ジャヴさんか・・・」


上体を起こしてモヒカンを確認すると、フゥとため息が出た。

なんとなくだが、寝ずに看病をしてくれるような人はララベルさんかなと思ってしまっていた。もちろん、感謝はしなければいけないのだが、ちょっと腹に乗っかっている頭をどかしてもいいかな、という気分になってきた。


「よ・・・っと。いててて」


身をよじろうが、頭をどかそうが、体のどこかが必ず痛む。苦労してベッドサイトまでいき、水を口に含むと、すぐ横にジャヴさんが立っていた。


「レイル・・・?」


きょとんとした顔だ。突然横に立たれたことに驚いた僕は、水を噴き出してしまう。


「ジャ・・・」

「うわあああ! みんな! レイルが起きたぞおおお!」


病院の全員を起こさんばかりの声で、ジャヴさんが絶叫する。


「イエエアアアアアァッ!」

「あの・・・傷に響くし・・・もう少し、静かにしないと・・・」


案の定、ドスンドスンと、足音が聞こえてくる。

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