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アーツ・ホルダー  作者: 字理 四宵 
第十三章 刺客
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刺客 -6

「とにかく、レイル君はしばらく右手が使えないし、任務なんかもってのほかだからね。あんたたちも、そのつもりでいるんだよ」


ララベルさんを引っぺがしながら、リンダさんはララベルさんと足元のジャヴさんに言う。


「そのつもりよ。そっちこそ、レイル君をしっかり見守っていてね」

「ああ、変な輩がいたら、ぶん殴って献体にしてやるさ」


リンダさんから恐ろしい台詞が飛び出す。


「それじゃ、私たちは行くけど・・・気を付けてね。一応、護衛がドアの前にいるから、何かあったら声をかけてね」


ララベルさんは、ジャヴさんの髪の毛を掴んで身支度をする。


「ありがとうございます。皆さんも、気を付けて」

「怪我人は、レイル君だけで十分だからね。ジャヴとかを連れてくるんじゃないよ」


リンダさんの悪態を背にして、ララベルさんとジャヴさんが出ていき、続いてリンダさんも他の患者を見に行くということで、席を外した。

皆が出て行った後、さっそく僕は服を脱いで自分の傷を確認する。包帯や傷の痛みが邪魔で、脱ぎづらくはあったが、一刻も早く自分がつけられた傷を見たかった。切られたことに気づかないほどの攻撃の正体は、なんだったのだろうか。

僕は自分がやられたときのことを何度も考えなおしていた。あの時は、わけもわからずにやられてしまったが、もう一度襲われたときには対処できるようにしておきたい。

胸の傷を確認すると、切り口が鋭い。刃物で切られたようだ。我ながら、縫合の後が痛々しい。右手の状態は・・・リンダさんは使えないと言っていたが、ナイフを握るくらいならなんとかなりそうだ。


(よし、もう一度・・・振り返ってみよう)


酒場の親父、青物屋の女性、杖を突いた老人、片手がない男、台車を引いた男、酒瓶を持った女性、かごを持った親子連れ(母親、息子)、買い物かごを持った若い男、角材を担いだ体格のいい労働者。

あの時、街の中で武装をしていた人間はいなかったように思える。角材や杖などを持っている人たちはいたが、それでこんな傷をつけられるとは考えにくい。


(あやしいのは、かごの中や台車の荷台か・・・?)


確か、台車には樽が載せてあり、男性の買い物かごには藁のような草が入っていて、女性の買い物かごには何も入っていなかった。物を隠すのには十分なスペースだろう。

しかし、例えば酒瓶や杖の中などにも鋭利なものを隠すことは可能だ。そこまで疑いだしたら、きりがない。

頭の中で何度もリピートするが、決定的な確証が得られないまま時間が過ぎていった。

ため息をつくと、気分転換にベッドから立ち上がってナイフを構えてみる。血が足りていないのか、切っ先が安定せず、マナの持ちも悪い。リンダさんに見つかったら何を言われるかわからないので、ベッドにもぐりこむ。

悪夢を見ないように、祈りながら目をつむると、吸い込まれるように眠りに落ちた。

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